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シンガポール

建設業に関する外資規制等

建設業関連情報(外資規制、建設業制度等)

外資に関する規制

〔外資に関する規制〕

外国資本による事業所有に関しても、国家の安全保障にかかわる公益事業、メディア関係等の一定の分野を除いて制限はない。
外資規制を管轄する官庁はない。ライセンスを管轄する官庁は業種によって異なる。建設業は専門技術者局(Professional Engineers Board: PEB)が監督省庁となる。

〔工事受注に当たっての現地法人の設立義務付け〕

シンガポールに拠点を設ける場合、主に三つの進出形態が考えられる。現地法人(Company)、支店(Branch)、駐在員事務所(Representative Office)である。シンガポールでは、現地法人の設立が他国と比較し、比較的容易であり、税制メリットも享受できるという理由から、現地法人による進出が多い。駐在員事務所は営業活動ができない、現地法人や支店に比べて設立後の維持管理費用が低く、管理も簡便であるため、最初は市場調査のみを目的とし、撤退の可能性も十分あり得るという状況であれば、駐在員事務所の設立という選択肢もあり得る。

出典

〔外資に関する規制〕

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る シンガポール 外資に関する規制」(2023年10月31日)


〔工事受注に当たっての現地法人の設立義務付け〕

日本貿易振興機構(JETRO)「シンガポールにおける会社設立のプロセス

建設業許可制度、条件・手続きの流れ

2009年6月16日以降、建築管理法(Building Control Act)に定める建築工事を請負う業者は建設業免許の資格が必要となる。

根拠法令

Building Control (Amendment) Act 2007
Building Control (Licensing of Builders) Regulations 2008

商業登記
・根拠法令

建設関連の個人事業や提携事業を行う場合は、他分野と同様に商業登記法(Business Registration Act)に基づき登記する。

有限会社の登記は会社法に基づく。

・許認可権者

ACRA (Accounting & Corporate Regulatory Authority) が商業登記法、会社法を執行している。

・許可手続き

オンラインの事業免許サービス (Online Business Licensing Service)が利用できる。

・所管省庁

ACRA (Accounting & Corporate Regulatory Authority)

出典

平成17年度 建設情報収集等管理調査報告書<シンガポール編>

財団法人 建設経済研究所「シンガポールの入札契約制度

入札契約制度、条件・手続き

〔概要〕

公共建設プロジェクトの入札においては、公開入札、指名入札、もしくは限定入札が行われる。

〔手続き〕

公開入札は、政府電子ビジネス (GeBiz) ウェブサイト上に入札情報が公開される。
指名入札は、選抜された請負企業だけが参加できる。
限定入札は、請負企業1社または選抜された請負企業グループだけに応札を依頼する。

2) 入札参加資格事前審査制度
制度概要
入札機関は、請負企業の種類と入札審査基準 (BCA の Contractors Registry によるもの) を明確に規定しており、基準を満たしていない企業はプロジェクトの入札に参加できない。

3) 品質保証制度
制度概要
建設産業の品質管理制度としてBCA ISO9000、環境管理システムとしてBCA ISO14000が導入されている。

竣工建築物の作業品質を評価する制度として、CONQUAS(Construction Quality Assessment System)が開発されている。

また公共プロジェクトを対象として、建設品質確保のためボーナス制度であるBSCQ(Bonus Scheme for Construction Quality)がある。

出典

国土交通省「平成17年度 建設情報収集等管理調査報告書 シンガポール編

技術者・技能者の資格制度

シンガポールにおいて建設に関する技術サービス業に携わる技術者の資格制度を定める法律には、 専門技術士法(Professional Engineers Act、PE 法)、建築士法(Architect Act)および測量士 法(Land Surveyors Act)がある。これらの法律は高い資格水準での技術者登録制度を設け、国 民の生命および財産の保護、福祉の増進、並びに技術サービス業の発展を図ることを目的として いる。建設分野のうち土木分野の技術者に関する資格・登録制度は PE 法で規定されている。 PE 法は国家開発省(Ministry of National Development)の所管で、現行法は 1991 年に制定さ れ、2004 年 1 月に最新の改正が行われた。

〔制度関連機関〕

①PEB: Professional Engineers Board, Singapore、シンガポール専門技術者委員会)
PEB は、シンガポール専門技術者法(Professional Engineer 法)にもとづき、技術者(個人及び法人)資格認定・登録、評価・審査、継続教育制度を所管する機関である。

②IES: Institution of Engineers, Singapore
IES は、日本の技術士会にあたるもので、PEB が実施する面接試験に試験委員を派遣する機関である。

③BCA: Building and Construction Authority
建築、建設産業の振興促進を目的とし 1999 年設立され、建設施設、構造物の品質および安全性の向上、維持管理システム等の構築、建設産業に携わる人材の能力開発・啓蒙、海外振興、公的技術機関としての技術サービス提供などをその活動範囲とする。建築確認・許可、耐震検査等の許認可制度、建設業者(電気設備、給排水衛生、維持管理サービス含む)の登録制度を所管する機関である。

出典

国土交通省「平成17年度 建設情報収集等管理調査報告書 シンガポール編

就労許可制度

〔外国人就業規制〕

政府の方針に基づき、外国人の就労ビザ取得など、外国人がシンガポールで就業するための規制が厳格化されている点に留意が必要である。

シンガポール政府は、2013年1月の人口白書において、シンガポール人を中心とする労働力基盤の確立を目指して「Strong Singaporean Core」の指針を打ち出した。これは、外国人労働者の受入れを規制し、シンガポール人労働者のスキルを向上させ、専門職、管理職、総合職や技術職に当たる「Professional, Managerial, Executive and Technical:PMET」の業務を中心に、シンガポール人の労働力基盤を強化する旨の指針を発表したものである。

かかる指針は、国内総労働力の3分の2をシンガポール人(および補足的に永住権保持者)労働者により構成することを目標に掲げるものである。また、科学技術やITの導入によって、これまで外国人労働者に依存していた業務を減らし、作業を効率化することも推奨している。

このような政府の方針に基づき、外国人の就労ビザ取得の要件が段階的に引き上げられており、発給審査も複数の追加書類提出などにより長期化する傾向にあるなど、外国人がシンガポールで就業するための規制がより厳格化されている点は留意が必要である。

〔在留許可〕

就労ビザは、「Work Pass(es)」と総称される。
日本人が当地で就労する際に取得を検討するビザは、一般的に次の8種類が該当する。

  • 1. Employment Pass(EP)
  • 2. S Pass
  • 3. Training Employment Pass(TEP)
  • 4. Personalised Employment Pass(PEP)
  • 5. Work Holiday Pass(under Work Holiday Programme)
  • 6. Entre Pass
  • 7. Tech. Pass (2021年1月より導入)
  • 8. Overseas Networks & Experience Pass(通称ONE Pass)(2023年1月より導入)

EPおよびS Passの取得にあたり要求される月額固定給の最低ラインが、新規申請については2022年9月1日以降、更新申請については2023年9月1日以降、それぞれ引き上げられている。また、EPについては、新規申請については 2023年9月1日以降、更新申請については2024年9月1日以降、COMPASSというポイント制に移行した。六つの審査項目について、それぞれ 0/10/20 のポイントが算出される。EPを取得するためには、合計ポイントが40以上である必要がある。

〔現地人の雇用義務〕

現地人の雇用義務について直接的な明言はないが、シンガポール政府は、「Strong Singaporean Core」に向け、シンガポール人の雇用促進に関連する政策を徐々に強化している。企業がPMET業務について外国人のみを対象者とした採用を行うことを規制するフェア・コンシダレーション・フレームワーク(FCF)や、S Pass(中技能労働者向けの就労ビザ)およびWork Permit(単純労働者向けの就労ビザ)を取得する場合のQuota(外国人従業員の採用可能枠)の引き締め、Levy(外国人雇用税)の値上げなどに留意する必要がある。

出典

日本貿易振興機構(JETRO)「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」(2023年12月13日)

建築基準

「建築基準法」に基づいて制定された「建築管理規則」の「別紙5(Fifth Schedule)」は、全ての建築物が満たさなければならない目標・性能要件を定めている。建築物が目標・性能要件を満たすためには、建築建設局が定める細則(認証対応策、Acceptable Solutions)に定められている規格に準拠する必要がある。細則では、シンガポール国家規格・英国規格(British Standard)・欧州構造規格(Eurocode)のいずれかへの準拠が要求されている。また、細則は建築に使用される資材別に策定されており、木造建築物が準拠すべき規格も定められている。その他、全ての建築物は火災安全法に基づいてシンガポール民間防衛隊(SCDF、消防当局)が定める防火安全規則や通達に準拠する必要がある。

出典

一般社団法人 日本木材輸出振興会「シンガポールの基準・規制

建設業関連データ

建設投資額(億米ドル)

80(2020年)、105(2021年)、122(2022年)

(Value Added by Economic Activity, at current prices - US Dollars)

出典

National Accounts - Analysis of Main Aggregates (AMA)

国内の建設企業数

17,553 社(2021年)

※BCA登録業者数

出典

Building and Construction Authority(BCA)「BCA Directory of Registered Contractors and Licensed Builders

建設労働者

52.8万人(2024年)

出典

Ministry of Manpower Employment summary table

インフラ整備水準

〔道路〕
  • 延長:9,608㎞(2022年)
〔電力〕
  • 発電量:583億kWh (2022年)
〔上下水道〕
  • 上水道普及率 100%(2022年)
  • 下水道普及率 100%(2022年)
出典

〔道路、電力、上下水道〕

A Singapore Government Agency Website「Land Transport Authority

我が国建設業の受注実績

  • 2019年度:2,042億円
  • 2020年度:1,946億円
  • 2021年度:2,449億円
  • 2022年度:2,781億円
  • 2023年度:2,557億円
出典

海外建設協会調べ(2024年12月)

ODA(百万ドル)

    ・円借款
  • △59.83(2012年)
  • - (2013年)
  • - (2014年)
  • - (2015年)
    ・無償資金協力
  • - (2015年)
  • 1.07(2016年)
  • 0.99(2017年)
  • 0.97(2018年)
    ・技術協力
  • 0.12(2015年)
  • 0.28(2016年)
  • 0.05(2017年)
  • 0.04(2018年)

※現在はODAの新規採択を終了している。

出典

外務省「国別開発協力実績(アジア)

建設業関連企業、団体、大学

出典

PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)

主な公共発注に関する情報

出典

PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)

業界団体

Singapore Institute of Architects(SIA)

シンガポールの建築業界と建築環境の促進を目的として 1963 年に設立された専門組織です。
協会はシンガポールの建築業界の唯一の代表機関です。

The Singapore Contractors Association Ltd.(シンガポール建設業者協会)

企業と政府機関の緊密な協力関係の橋渡し、会員向けのネットワーキング イベント、表彰および賞のプラットフォーム、ビジネスの成功を促進するプログラムの管理など、さまざまなプラットフォームの促進を通じて、シンガポールの建設業界の声となる重要な役割を果たしています。

出典

PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)

土木・建築系の学科を有する主な大学

出典

PwCコンサルティング合同会社調べ(2024年11月)

ビジネス環境

ビジネス慣行

〔ビジネス環境の現状〕(2024年)
事業設立
平均的な所要日数
15日
建設許可取得
平均的な所要日数
7日
不動産取得(譲渡による登記手続き等)
平均的な所要日数
105日
納税
手続きにかかる平均的な所要時間数
100時間
税率
14%
貿易
(輸出)
手続きにかかる平均的な所要日数
4日
(輸入)
手続きにかかる平均的な所要日数
3日
出典

World bank「BUSINESS READY

問題等の解決

  • 在シンガポールインフラプロジェクト専門官
  • 「インフラプロジェクト専門官」は、各在外公館においてインフラプロジェクトに関する情報を収集・集約すると共に、関係機関や商工会等との連絡・調整に際して窓口となる等、インフラ海外展開の支援を担当している。
  • 在シンガポール大使館 日本企業支援窓口
  • JETROビジネス展開支援(シンガポール)
  • 国土交通省海外建設ホットライン
  • 国土交通省における、海外建設プロジェクトにおける施工技術、施工管理マネジメントへの課題・対応方策に関する、海外進出建設会社・コンサルタントからの相談窓口
出典

外務省 インフラプロジェクト専門官(2024年10月31日)

外務省 日本企業支援窓口リスト(2024年11月27日)

日本貿易振興機構(JETRO)「ビジネス展開支援 シンガポール

国土交通省海外建設ホットライン

各国・地域特有の課題

〔ガバナンス指標のパーセンタイルランク〕

シンガポールよりランクが低い国の割合(2023年)

  • 政治的安定と暴力・テロ等安全度 97%
  • 政府機関の効率性・独立性 100%
  • 規則の策定や遵守度 100%
  • 法の支配度 98%
  • 汚職の抑制 98%
出典

World Bank「Worldwide governance Indicators

マスタープラン

マスタープラン

〔新成長戦略〕

シンガポール政府が新設した経済戦略策定機関「未来経済委員会(CFE)」が2017年2月7日に発表。7分野ビジョンの内容は以下の通り。

  • ①国際関係の深化と多角化
  • ②労働者の継続的な技術習得とその活用の強化
  • ③企業のイノベーション振興と事業拡大の促進
  • ④デジタル技術能力の強化
  • ⑤都市の活性化とコネクティビティの強化
  • ⑥23業種の産業変革マップ(ITM)の策定と導入
  • ⑦イノベーションのためのパートナーシップ構築の促進

年2~3%のGDP成長率達成。GDPに占める製造業の割合20%を維持。目指すは「次世代のパイオニア」。オープンで世界と相互接続した価値創造型の経済を構築すること。全ての国民に、豊富な機会、持続的な賃金上昇、有意義なキャリアを提供することを目指すとしている。

〔その他経済政策と動向〕

(1)戦略的な経済政策
国内産業構造の高度化や、サービス(運輸、金融、教育等)のハブ機能強化を推進(近年のシンガポール経済を、バイオメディカル、製造業、サービス業等が牽引)。バイオメディカル産業については「バイオポリス」、情報通信・メディア産業については「フュージョノポリス」といった産業集積拠点を設置。

(2)経済連携枠組構想の推進
シンガポールはこれまでに、日本、米国、中国、豪州等、32の国及び地域と21の自由貿易協定/経済連携協定(FTA/EPA)を締結。また、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などの広域経済連携構想にも積極的で、アジア太平洋地域における自由貿易の推進に努めている。

(3)最近の経済動向
世界経済の成長鈍化、資源価格の低迷等を背景に2016年は2.0%の低成長。政府は、今後の景気下振れのリスク要因として、
ア 欧州経済の先行き不透明感の高まり、
イ 中国における企業債務の拡大や不動産バブル崩壊による急激な景気悪化の可能性、
ウ 反グローバリゼーションの台頭が世界貿易に打撃を与える可能性を挙げ、2017年も低成長が続くと予想。

これらリスクが完全に顕在化しなかった場合の通年の経済成長見通しとして、1.0~3.0%を予想している。

出典

〔新成長戦略〕

一般財団法人自治体国際化協会 シンガポール事務所


〔その他経済政策と動向〕

外務省「最近のシンガポール情勢と日・シンガポール関係」(令和5年9月15日)

開発案件

タンピネスウォーキング&サイクリングタウンの開発

包括的なウォーキングとサイクリングのネットワークをサポートするために、近隣のインフラを改善する作業が進行中である。歩行者や移動に制約のある人々にとってより安全で便利なものにするために、新しい設備が建設されている。これには、幅の広い歩道、バリアフリーのスロープ、速度抑制対策を施した道路の再設計が含まれる。既存の自転車ネットワークも6.9kmから約21kmに3倍に拡大され、タンピネス、タンピネス・イースト、タンピネス・ウェストMRT駅から住民を自宅、学校、近隣のその他の主要施設にさらに便利につなげることができるようになる。

南北線と東西線のアップグレード (NSEWL)

現在および将来の需要に対して信頼性を向上および強化する。

ジュロン地域線 西側諸国の連結性強化

ジュロン リージョン ライン (JRL) はシンガポールの7番目のMRTラインで、シンガポール西部の既存および将来の開発に役立つ。この路線は地域の接続性を大幅に向上させ、中央ビジネス地区以外で最大の商業拠点となる予定のジュロン地区の開発をサポートする。通勤者は、ジュロン工業団地、ジュロン イノベーション地区、南洋理工大学 (NTU) など、ジュロンの主要な活動拠点に接続できるようになる。

クロスアイランドライン 島全体をつなぐ鉄道開発

8番目のMRT路線であるクロスアイランド線(CRL)は、全長50キロメートルを超える最長の完全地下路線となる。この路線は、東部、西部、北東部回廊の既存および将来の開発に役立ち、ジュロン湖地区、プンゴルデジタル地区、チャンギ地域などの主要な拠点を結ぶ。

トムソン・イーストコースト線の開発

トムソン・イーストコースト線 (TEL) は、東部および南北回廊沿いの住民を鉄道駅に近づけ、都市へのアクセスを迅速化する。通勤者は TEL を利用することで、移動時間を最大50パーセント節約できる。

東西線 (EWL)、南北線 (NSL)、北東線 (NEL)、サークル線 (CCL)、ダウンタウン線 (DTL)、クロスアイランド線 (CRL) の主要路線すべてに接続する8つの乗り換え地点により、より多くのルート オプションが利用できるようになる。この路線が完全に完成すると、毎日約100万人の通勤者に利便性がもたらされ、東西線と南北線の混雑が緩和される。

出典

Land Transport Authority (LTA)

今後注視すべき主要プロジェクト一覧

チャンギ国際空港第5ターミナル建設事業

チャンギ国際空港の第5旅客ターミナル及び関連施設を建設する事業。

オンデマンド交通サービス等提供事業【新規案件】

AI を活用したオンデマンド交通サービスの提供、オンデマンド交通サービスと既存公共交通を複合検索できるアプリサービスの開発・提供等を行う MaaS 関連事業。

出典

国土交通省「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画 (令和5度版)

※データベースについては、関係機関等から収集した情報を掲載しており、必ずしも正確性または完全性を保証するものではありません。掲載情報の詳細については、出典元にお問い合わせいただくようお願いいたします(掲載情報以外の内容については、国土交通省としてお答えできません)。また、閲覧者が当データベースの情報を用いて行う一切の行為について、国土交通省として何ら責任を負うものではありません。

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