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オーストラリア

現地法人等の形態

現地法人等の形態

現地法人

現地法人はオーストラリアの会社法に基づき、ASICへの登録によって設立される。現地法人はオーストラリアの会社として個別の法人格をもち、株式会社の場合、株主の法的責任は通常保有株式の未払込額または一定の金額までに限定される。会社法上の会社(現地法人)には以下の種類がある。

  • 株式有限責任会社 (Company Limited by Shares)
  • 株主の責任は保有株式の未払込額までに限定される。

  • 保証有限責任会社 (Company Limited by Guarantee)
  • 主に非営利団体が用いる会社形態で、一般の株式会社の株主に相当するメンバーは、ある一定の保証額まで会社の負債の保証をする。会社が清算される際に負担する金額を事前に特定することが各メンバーに求められる。

  • 無限責任会社 (Company with Unlimited Liability)
  • 出資者の責任に制限がない会社で、パートナーシップに類似するもの。

  • 無責任会社 (No Liability Company)
  • オーストラリアでは、定款にて鉱業を営むことを目的としている会社のみ無責任会社として登録することが認められている。会社は株主に対し未払込額の支払請求権を持たない。
    上記のうち最も一般的な形態は株式有限責任会社であり、その種類は大きく分けて以下の2種類がある。

  • 公開有限責任株式会社(Public Company Limited by Shares): 例 ABC Ltd
  • 非公開会社(Proprietary Company): 例 ABC Pty Ltd
  • 公開会社は不特定多数の投資家を対象に株式や債券などを発行して資金調達することが可能であるが、非公開会社は通常、少数特定の投資家に発行される。現地において上場などを予定している場合を除き、柔軟性の高い非公開会社が最も多く選択される事業形態といえる。また、非公開会社の設立手続きはより簡単であるため、取締役および株主など登録に必要な情報が揃えば、短い時間と低コストで会社を設立することが可能である。

支店

外国法人は、新規でオーストラリアに子会社を設立するのではなく、外国法人自体をASICに登録することによって「支店」を設立することが可能である。その場合、支店は独立した法的事業体ではないため、支店がオーストラリアで行う事業の義務・責任は直接海外の親会社が負う。支店はオーストラリア登録企業番号(Australian Registered Body Number、ARBN)を取得することによって、オーストラリアで事業を行うことが可能になる。

支店の登録には、日本の会社の定款を翻訳するほか、登記書類の認証コピーを入手する必要があるなど手続きが煩雑になるため、現地法人よりも通常、日数やコストがかかる。支店は税務上オーストラリアの恒久的施設(Permanent Establishment、PE)として法人税課税の対象となる。恒久的施設はオーストラリアの国内法および各国との租税条約上定義されており、概念的に企業が拠点として事業を行う一定した場所を指す。

概して、日本の居住者である法人がオーストラリア国内に恒久的施設を有する場合、オーストラリア政府は日豪租税条約に基づき、日本の居住法人が稼得したオーストラリア源泉の事業所得で、恒久的施設に帰属するものに対して課税する権利を有する。そのため恒久的施設とみなされた場合は税務登録を行うことおよび法人税申告書を提出することが求められる。

支店登録をしていない場合でも、オーストラリア国内における活動により恒久的施設が生じている場合があるので注意が必要である。恒久的施設を成すとされる活動はオーストラリア国内法および租税条約で定義されており、オーストラリアにおいて恒久的施設に関わる納税・申告義務が生じているかどうかについての判断は、事実関係の詳細な検討および日豪租税条約に照らし合わせた解釈に基づいて、慎重に行う必要がある。

駐在員事務所

駐在員事務所

駐在員事務所は非居住法人のオーストラリアにおける活動が市場調査や連絡活動に限定され、営利目的の営業活動を行うことができない。そのため法人格は有しておらず、オーストラリア証券投資員会(ASIC)への登記は必要ない。

税務登録

駐在員事務所は収益を生じるような営業活動を行うことができないため、法人税の納税義務は一般的に生じないが、駐在員事務所における活動が税務上の恒久的施設(PE)と認定された場合は、外国法人としてオーストラリアでの法人税の課税対象となる。一方、駐在員事務所は支店、現地法人などの事業形態と同様に従業員を雇用することが可能である。従って、雇用者としての税務義務が発生する。例えば、給与からの所得税の源泉徴収や税金の申告・支払いが必要となる。

税務登録に必要な書類

駐在員事務所のような非居住者である外国法人が税務登録をする際には、一般的にATOに以下の書類の提出が求められる。

    1) 会社の設立証明書
    2) 日本の税務当局から発行された消費税登録証明書
    3) 以下の情報を含む税務当局により発行された事業状況に関する証明書
  • 事業の正式名称またはトレーディング名称
  • 事業構造または業界
  • 事業を開始した日
  • 日本における事業の消費税登録番号
  • 4) 取締役のパスポートや運転免許証などの認証コピー

2)および3)については税務署の発行する居住者証明(Certificate of Domicile)で代用可能。

文書の英訳は通常、オーストラリア政府に認定(NATTIなど)された翻訳業者によるものが必要。

出資比率

オーストラリア政府は外資の必要性を認識し、オーストラリア経済の発展につながる外国資本を基本的に歓迎する方針を採っている。

連邦政府は2020年6月5日、外国投資に対して、国家安全保障の観点に基づく新たな審査方法や、監視・調査体制の整備、罰則の強化など、1975外資による取得および買収に関する法律(Foreign Acquisitions and Takeovers Act 1975)の大幅な改正を行うことを発表した。改正法は、2021年1月1日に施行された。また、重要インフラ安全保障法(Security of Critical Infrastructure Act 2018)の改正法が2021年12月3日に施行され、外資買収法における国家安全保障に関する事業の定義が拡大され、従来の定義の範囲である水、電気、港湾、ガスなどに加えて、金融、エネルギー、ヘルスケアなどに拡大された。

事前認可

オーストラリアではこれまで、大部分の産業において、小規模な外資買収は報告義務が免除されており、多額の投資の場合でも国益に反しない限り認可されていた。法改正に伴い、投資額の大小に関わらず、国家安全保障通知義務行為(Notifiable national security action)および国家安全保障再審査義務行為(Reviewable national security action)の2つの新たな概念が導入され、外国人投資家がこれらに該当する行為を行う場合、外国投資審査委員会(FIRB)の承認取得が義務付けられた。

事前認可が必要となる主な要件

外国人投資家が投資する際、FIRBの事前認可の対象となるかは、投資家の種類、投資の種類、投資金額、国家安全保障に関わる事業かどうか、投資予定の事業に事前認可の例外が該当するかなどの項目について確認する必要がある。主な要件として、連邦政府が規定する外国投資案件の閾額に該当する場合、FIRBの事前認可が必要である。オーストラリアと自由貿易協定を締結しているため、日本の投資家は「特定のFTA締結相手国・地域の民間投資家」に該当する。なお、国家安全保障に関する事業への投資、外国政府による投資は金額にかかわらず事前認可の対象となる。詳細は、それ以外の要件も含め、FIRBの「外国投資に関する手引き」を参照すること。

なお、国家安全保障に関する事業(National Security Business)への投資には、金融サービス、通信、メディア、防衛、軍事用重要技術、エネルギー、食品、ヘルスケア、高等教育施設、IT、港湾、航空、貨物、公共交通機関、上下水道などに分類される事業において、経営への関与など直接的権利の取得(基本10%以上)、新規開業が含まれる。各分野における要件等詳細は、FIRBの国家安全保障に関するガイダンス資料を参照すること。

外資買収法以外の法律において、外国投資で求められる要件について、主なものは以下のとおりである。他の産業や詳細は、FIRBの「外国投資に関する手引き」を参照すること。

銀行・金融業

銀行業に対する外国投資は、銀行法(Banking Act 1959)、金融部門株主法(FSSA:Financial Sector (Shareholdings) Act 1998)および健全経営規制を含む銀行政策に適合する必要がある。

民間航空業(国際線)

外国人投資家による国際線運航企業(カンタス航空を含む)の合計所有は、航空法(Air Navigation Act 1920)などにより、最大49%までに制限される。

空港運営業

オーストラリアの空港に対する外国投資は、通常の通知要件に基づき事例ごとに審査される。連邦政府により売却された空港については、空港法(Airport Act 1996)により、外国人投資家の所有は最大49%に、航空会社の相互所有は5%に、そして、シドニー空港とメルボルン、ブリスベンおよびパースの各空港の所有には一定の制限が設けられている。

海運業

オーストラリアの海運業者により用船契約される船舶を除き、オーストラリア船籍を登録するためには過半数がオーストラリア人(企業その他の団体)による所有である必要がある(船舶登録法:Shipping Registration Act 1981)。ただし、オーストラリアの運航業者が借り切っていると認められる場合は、この限りではない。

通信業

テルストラ法(Telstra Corporation Act 1991)により、テルストラ社の外国人投資家による合計所有は35%に制限されており、単独では5%を超えて所有することはできない。

農林水産業

外国人投資家が農地を新たに取得、または既に所有している場合、土地の価格にかかわらず、オーストラリア国税局(ATO)の農地登録制度に申告することが義務付けられている。

重要インフラ資産

重要インフラ安全保障法(Security of Critical Infrastructure Act 2018)により、重要インフラ資産10%以上を所有する事業体および責任主体(その資産を運用するライセンスを付与された団体)は、内務省サイバーインフラセキュリティーセンター(CISC)の重要インフラ資産登録簿に情報提供を求められる。詳細は、CISCのウェブサイトを参照すること。

出典

〔現地法人、支店、駐在員事務所〕

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る オーストラリアにおける企業設立および税務等に関するガイド」(2023年4月30日)


〔出資比率〕

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る オーストラリア 外資に関する規制」(2023年12月1日)

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