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ブラジル

不動産関連情報

不動産に関する法制度

不動産関連法・制度の現状

ブラジルの相続無償譲渡税(ITCMD:Imposto sobre transmissao causa mortisou doacao)は資産や財産権の無償譲渡が課税対象となり、贈与や遺産譲渡に課される租税で、税率は各州が定めており、税率は8%が上限となっている。サンパウロ州では相続無償譲渡税として4%の税率が課されているが、各州政府は2017年からの相続無償譲渡税引き上げを検討している。

土地・不動産の所有権

ブラジルにおいては、土地と建物は一体の不動産とされており、所有権が不動産に対するもっとも基本的な権利とされている。

〔不動産に関する権利〕
  • 占有権(Posse )
  • 地上権(Direito de Superficie)および使用権(Usufruto)
  • もっとも一般的に利用されている不動産の使用に関する物権は地上権( Direito de Superficie )と使用権(Usufruto )である。
  • 通行権( Direito de Passagem Forcada )および地役権(Ser vi dao )
  • 賃借権
  • 賃借権(都市域不動産についてはAl uguel と呼ばれ、郊外域不動産についてはArrendamentoと呼ばれる。)は私人間の合意によって設定できる。

※不動産に対する担保権としては、主として、抵当権(Hipoteca)及び担保的信託譲渡(Alienacao Fiduciaria)の2 種類がある。

〔不動産に関する法律〕
  • The Brazilian Civil Code
  • Public Register Law (Law 6015/73 Law 6015/73)
  • Lease Law (Law 8245/91)など

土地・不動産の登記

登記制度は存在し、未登記の不動産は取引できない。公証人により公正証書を作成しこれに基づき不動産登記所(Cartorio de Registro deImoveis )において登記する。

不動産の鑑定評価

不動産の鑑定評価は家主か銀行が依頼して行う。鑑定評価はブラジル技術基準協会(ABNT)の「ブラジル技術基準第14653号:資産評価基準」によって規定されている。

日本の不動産鑑定士などの資格はなく、鑑定評価に法的に携わることができるのは、工学士、建築学士または農学士等であって、居住している州の工学士、建築学士、農学士州協会(CREA)に会員登録しているものである。それぞれの卒業学科により遂行できる鑑定評価の範疇が定められている。各州に鑑定士がいる。

法制度が確認できるWebサイトの紹介

Presidencia da Republica

不動産事業を行う際の免許制度

不動産を行う際の免許を取得するためには、CRECI(the Regional Coucil of Real Estate Brokers)(Conselho Regional de Corretores de Imoveis)に登録する必要があり、TTI(Tecnico em Transacoes Imobiliarias)を受講しなければならない。個人での免許も存在し、毎年の更新が必要である。

出典

土地・不動産の所有権、土地・不動産の登記

石井陽一「ブラジルの不動産法(上)」「国際商事法務」2(6)(1974年6月)


不動産の鑑定評価

秋山祐子「ブラジルにおける不動産鑑定評価(上)」「不動案鑑定」46(6)(2009年6月)

不動産の取引に関する制度

消費者保護(インスペクション、瑕疵対応、その他)

不動産も対象に含む消費者保護法が1990年に制定され、消費者の基本的な権利や商品・サービスの質等に関する規定が設けられている。

不動産行政の方向性(新築・中古、長期・短期、持家・借家)

不動産業の中で重要な位置を占める住宅市場は、1980年代半ばに国の住宅金融制度が破たんし、国・州・ムニシピオそれぞれの政策が迷走した結果、中・低所得者層への住宅供給が滞り、長らく住宅不足の状態が続いた。不動産業はその間、ローンを必要としない高所得者層への住宅供給を中心に展開されていたが、97年に不動産ファイナンス法(SFI: Sistema de Financiamento Imobiliario)、2001年に都市基本法(Estatuto da Cidade)が制定され、03年には都市省(Ministerio das Cidades)が創設された。さらに04年には国家住宅政策基本方針(PNH: Politica Nacional de Habitacao)が制定され、その後の10年間にPNHの具体的施策が次々と打ち出されていく。既存のファイナンス制度(退職金の勤続年限保障基金[FGTS]、不動産融資制度[SBPE]など)の運用の見直し、中・低所得者層向け住宅整備政策「私の家・私の暮らし計画(PMCMV: Programa Minha Casa Minha Vida)」などが、住宅市場の拡大を後押しした。

この間、中間層人口が拡大したこともあいまって、PMCMVはそれまで住宅市場の対象外であった低所得者層も取り込むこととなり、不動産業の発展に大きく寄与している。定期預金を元金とするSBPEの融資件数・融資総額も、2004~14年にかけて順調に増え続けている。

また2000年以降、不動産の証券化が進み、資本市場からの資金調達方法も利便性が増している。外国資本の不動産市場への参入もこの間の特徴である。証券化市場では高級住宅のほか、オフィス、ホテル、ショッピングセンター等の商業施設およびこれらの複合不動産、物流施設等の商品が多数開発されている。

サンパウロ証券・商品・先物取引所(BM&FBOVESPA)に上場している不動産証券化商品としては、不動産投資ファンド(FII: Fundo de Investimento Imobiliario)と不動産受益権債権(CRI: Certificado de Recebiveis Imobiliarios)がある。現在、サンパウロ市などの大都市圏で展開している大規模開発案件の多くが証券化による事業である。

2004年以降は不動産価格・賃料の上昇も顕著である。不動産価格指数(経済研究所によるFIPE-ZAP)でみると、08年1月時点の価格・賃料(マンション)を100とすると、15年3月時点のリオデジャネイロ市の価格指数は366、賃料指数は242、サンパウロ市の価格指数は321、賃料指数は200である(いずれも名目)。これは同時期の拡大消費者物価指数(IPCA)を上回る上昇率である(IPCAは08年1月を100とした場合、15年3月は152)。ただし、15年に入ってから市場は調整に入ったものとみられる。

不動産金融(住宅ローンの実態、ローン審査、担保評価)

Real Estate Credit Societies(Sociedades de Credito Inmobiiario,SCI) (不動産信用組合) が住宅ローン融資の大半(民間と公的の両方)を行ってきた。現在では、SCIのほとんどが多種サービス銀行に形を変えている。高インフレ率は、住宅ローン融資状況にいくばかりかの影響を与えたが、住宅ローンは十分市場性をもっていた。しかし、中央銀行のインフレを収束させようという試みの、当座預金の100%および定期預金の30%の準備金を銀行に課すことによって1993年以降は、住宅ローンは実質的には存在しなくなった。

数多くの公的機関が住宅金融を行っている。連邦貯金銀行(Fedeal Savings Bank (Caxia Economica Federal))は特に重要な機関である。同銀行では、1986年以降、住宅金融制度(Residential Financing System (Sistema Fainancero Habitacional: SFH))の基金監督をしている。

1993年と1994年には、住宅ローン残高は行われていなかったが、名目残高は1992年の1億6200万クルゼーロから1994年8月には453億4400万クルゼーロに増えた。

住宅ローンは固定及び変動金利であり、ローンの借り手は収入や年齢などの審査を受ける。

担保評価は銀行が行う。 不動産に設定される担保としては、抵当権(Hypoteca)と担保的信託譲渡(Alientacao Fiduciaria em Garantia)がある。

不動産のリース(期間、延長・解除の是非)

賃貸住宅の標準的な契約期間は30ヶ月であるが、法律によって定められてはいない。また、12ヶ月などの期間もある。

契約終了時に貸主の合意があれば借主は契約を延長できる。これはRenewal Right として認められている。貸主はこれを拒否することができ、不服がある場合、借主は裁判所に申し立てを行う必要がある。

契約期間中に貸主は原則的に契約を解除できないが、債務不履行や契約違反がある場合は解約することが可能である。また、借主は30日前に通達することを条件に契約期間中に契約を解除することが可能である。

出典

不動産行政の方向性

ブラジル商工会議所編「現代ブラジル事典」(2016年)


不動産金融

日本貿易振興機構(JETRO)「サンパウロスタイル」(2010年9月)


不動産金融

森・濱田松本法律事務所「ブラジル不動産投資法制概説」不動産証券化協会「ARES 不動産証券化ジャーナル」Vol.31(2016年)

住宅金融普及協会「ブラジル」「世界の住宅金融ソースブック1995」(1998年)

日本貿易振興機構(JETRO)「サンパウロ駐在生活ガイドブック

不動産に関する税制

不動産取得に関する税制

〔生存者間不動産譲渡税(ITBI)〕

市税としてITBIが、生存者間の不動産ならびに不動産に対する権利の譲渡に対して累進的に課税される。税率は不動産の所在地により異なる。サンパウロ市の税率は2%。ただし、住宅金融システム(SFH)の融資を受けている不動産の場合、制限額までの税率は0.5%。

不動産保有に関する税制

〔土地家屋税(IPTU)〕

市税としてIPTUが、都市の土地所有者(便益を享受している者)から毎年徴収される。所有者と占有者の契約により、占有者が支払うのが一般的。課税標準は税法に定められた方式で換算され、土地や建物に決められた価格に基づいて計算されている。サンパウロ市では土地の利用度に従い、0.8~1.6%の税率が適用される。居住用建物に対する税率は1%、非居住用建物は1.5%。不動産価額により割引または割増される。

出典

不動産取得に関する税制

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る ブラジル 税制」(2015年5月)


不動産保有に関する税制

「世界税制事情 ブラジル」「税経通信」(2011年10月)

NNA調べ(2016年6月)

不動産取引に関する外国人及び外国資本に対する規制

外資に関する優遇処置もしくは規制

奨励業種に関して、特に外資、内資は区別されていない。雇用を多く創出し、かつイノベーションを促すITなどの最先端産業や自動車産業等、インフラ開発部門に対する投資優遇策などがある。

  • REIDI(2007年6月15日付け法令11488号、インフラ開発奨励特別プログラム)
  • 交通、港湾、空港、エネルギー、公衆衛生、水利事業プロジェクトに対するインフラ投資奨励策。 社会負担金(Pis/Cofins)に対する税制恩典が与えられる。

外資参入の許認可制度

不動産業への外資規制はない。ただし、ブラジルの国境に隣接した土地において、事業を行い、または、不動産保有を伴う事業に参加することは、外国人には許されていない。核エネルギー開発、郵便事業や航空宇宙産業等の禁止産業および規制産業を除き、外資がブラジル国内に会社を設立することも国内企業に資本参加することも法律で認められている。

2002年9月の新法により、外国企業も法人納税番号(CNPJ)を申請、取得するよう義務付けられた。出資者として外国企業を定款に記載する際も法人納税番号が必要。なお、外国企業または国外に居住する個人がブラジル企業に出資する場合、ブラジル国内のブラジル人または永住居住者を代理人として任命する必要がある。

外国人による不動産の取引について

〔外国企業の土地所有〕

一定の制限があるものの、外国企業の土地所有が可能。
外国人は、海岸地帯、国境周辺、および国が安全地帯として指定する場所でない限り、個人、法人(企業)を問わず国内の個人、法人(企業)と同様に土地・不動産の所有が認められる。

都市部の土地所有(Urban Property)

特に規制、制限はない。

地方の土地所有(Rural Property)

国内の外国人または外国企業による土地所有が農牧畜事業または工業製造事業の導入、開発を目的としたものであり、かつそれらの事業が社会的責任を果たすのに即したものであると考えられる場合にのみ許可が与えられる。事業内容により、農務省または開発商工省の認可を必要とする。

取得可能な土地面積

国立植民農地改革院(INCRA)が定めるMEIと呼ばれる基準単位を用い、外国人が取得可能な土地面積は50MEIを超えてはならないと規定されている。外国企業が取得可能な面積の制限は規定されていないが、1993年2月25日付法令8629号は、100MEI以上の土地を購入する場合、国会での承認を必要としている。このMEIの1単位あたりの面積は、自治体により5~100ヘクタールと異なり、外国人の場合は250ヘクタールから5,000ヘクタールが、外国企業の場合は500ヘクタールから1万ヘクタールが土地取得の上限面積となる。

1971年10月7日法令5709号第12条にて、1つの自治体の面積の4分の1を超える土地を外国籍の個人・法人(単数・複数を問わない)が所有することが禁じられ、また同一国籍の個人・法人(単数・複数を問わない)による土地所有が外国籍の個人・法人の所有面積の40%を超えることはできないと規定されている。

各自治体の面積の25%以上を外国籍の個人・法人によって占有することはできず、また同一国籍の個人・法人によって10%以上を占有することはできない。

1971年10月7日付法令5709号の解釈に関して、ブラジルでは長年議論があり、外国企業傘下のブラジル現地法人で法令制限を超えた土地取得をする事例が見られた。しかし、中国や米国などの外国企業や外国人がブラジル農村部の土地を購入する事例が増えたため、2010年8月に法令5709号に関して政府としての見解を意見書(国家総弁護庁(AGU)2010年8月19日付意見書(Parecer)No.LA-01)として発表し、その後、INCRAより公布された2011年12月6日付基本通達70号に意見書の内容を反映、外国企業や外国人の農村部の土地購入に関して厳密な法令適用を行い、政府が外国企業、外国人による土地購入状況をチェックする体制を強化している。

一方で、外国籍の個人・法人による土地所有を緩和すべきとの意見も根強く、2012年には改正案(Projeto de Lei 4059/2012)が出されている。2015年9月の格付機関によるブラジル格付の引き下げ以降、財政再建策の一環とし税収増を目的に改正案を承認しようとの動きが再燃している。

出典

外資に関する優遇処置もしくは規制

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る ブラジル 外資に関する奨励


外資参入の許認可制度

西村あさひ法律事務所「Doing Business In ブラジル」(2012年)

国際協力銀行「ブラジルの投資環境」(2011年)


外国人による不動産の取引について

日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る ブラジル 外資に関する規制

主要都市等における不動産マーケット情報

主要都市などにおけるマーケット情報

〔工業用地価格(2016年1月)〕
カンピーナス

120~400レアル/m2

〔事務所賃料〕
サンパウロ
  • パウリスタ大通り地区
  • 35米ドル/m2月
    1,151㎡:144,000レアル+共益費18,200レアル
〔駐在員用住宅借上料〕
サンパウロ
  • ジャルジン・パウリスタ地区マンションタイプ(210㎡、駐車場3台)
  • 3,291米ドル/月(4ベッドルーム)
    賃借料11,000レアル+共益費2,200レアル

取引履歴・物件情報等のデータベース化

〔不動産調査会社〕
出典

主要都市などにおけるマーケット情報

ブラジル日本商工会議所 建設不動産部会「2015年の回顧と2016年の展望」(2016年2月)

日本貿易振興機構(JETRO)「投資コスト比較」(2016年1月)

スターツ総合研究所・スターツコーポレーション(株)「グローバルビジネスサポート」(2015年3月)


取引履歴・物件情報などのデータベース化

NNA調べ(2016年6月)

不動産業者に関する情報

業界団体

主な国内不動産業者

〔デベロッパー〕
〔仲介業〕

不動産業(住宅販売等を含む)を展開する主な日系企業

  • スターツコーポレーション 等

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