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インドでは土地(およびその上に建つ建物)の私有が認められている。
ただし、インドでの土地の取得には、かなりの困難性が伴う。土地所有権者が容易に特定できず、政府が所有しているはずの土地でも別の者が所有を主張する場合もあり、トラブル・訴訟になり失敗する事例、政治が介入する事例なども少なくない。また、土地利用と不動産権利に厳しい制限が設けられているため、用途変更規制により、自由に土地を使えないことがある。
外資系企業は通常、2013年会社法に基づく連絡事務所、支社、子会社として、または有限責任組合として存在を確立し、その事業目的のために、農地を除く、不動産の取得を許可されている。
インドには不動産そのものを登記する制度は存在せず、政府は土地の権利証を発行しない。所有権の有無は、権利証ではなく、過去の売買契約を通じて確定される。
土地の取引の際には、取引に関する書類(例えば、売買契約書など)を原則として締結日から4か月以内に登記しなければならない。 1908年登記法(Registration Act,1908)によると、同法が定める一定の重要な取引行為等に係る文書については、州・地方レベルの登記所(Sub-Registrar of Assurances)で登記を行わなければならないと規定している。そのため、通常、不動産の売買を行った場合、売買契約書を登記して第三者対抗要件を備える。
具体的な登記手続きは、州によって異なるが、過去において登記されている土地と建物を購入するような一般的な場合でも、各種規制をクリアしているかどうかの審査や登記する売買契約書の準備、印紙税の支払い、登記所へ出向いての申請など、複数の手順を経る必要がある。また、これらの手順それぞれに費用と日数がかかる。
土地取得のために売買契約書を 30年、50年と遡り調査をしたとしても、それ以前の時期の所有を主張する者が現れ訴訟となるケースもある。
インドでは、土地の所有権自体が登記されているわけではなく、不動産取引書類が登記されている。よって、売り主がその所有権を有するかを確認する場合には買い手側が過去に遡って調査する必要がある。Registration Act(登記法)上、12 ヶ月を超える賃貸借については登記が効力要件とされているが、それ以外の賃貸借は登記によって行うこともできるほか、口頭の合意と引渡しによって行うことも可能である。よって、12カ月以内の賃貸契約などは登記義務もなく途中書類の登記が抜けている場合も多々ある。また、地方では不動産取引書類が現地言語(英語以外の言語)などで記述されている場合もありその確認を困難にしている。土地に関する登記制度については、RegistrationAct(登録法)上、取引に関する文書(売買契約書や賃貸借契約書)が登録の対象となっている。取引に関する文書の登録は当該取引の 効力発生要件であり、登録されていない取引に関する書類(売買契約書や賃貸借契約書)は、 訴訟において証拠として認められず、当該契約は執行できないこととされる。
不動産鑑定士は富裕税法令のもと国家資格として認められており、IOV(Institution of Valuers)という組織にて取得できる。銀行や団体など評価業務を行う者であっても必ず取得すべきものではない。当該資格を取得せずに評価業務を行っている会社は多い。
多くの民間企業は、現時点では英国王立チャータード・サベイヤーズ協会(RICS:Royal Institution of Chartered Surveyors)に従っており、RICS基準とその資格者が、規範となりつつある。尚、不動産鑑定業者数は多くの小規模国内会社があり、詳細は不明である。
国は、2011年から国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)の適応のため、IVSの導入に関心は示しているものの、積極的に取り組んでいるとは言えない状況である。
インドでは、独自の基準として富裕税法令の基準があるが、殆ど使われていない。また、国内の評価人が規範とするような他の評価基準を規定する組織もない。その様な状況下で、多くの評価会社は、現時点ではRICS基準に従っており、RICS基準とその資格者が、規範となりつつある。国は、IFRSの適応を背景にIVSに興味を持っているようであるが、鑑定士はIVS導入に積極的とは言えないようである。海外顧客はRICSとIVSを求めており、欧米系の評価会社がそのような要求に応えているのが現状である。
各州政府による不動産業ライセンスを取得する必要がある。
資格条件は各州により異なる。受験資格は複数年不動産会社に勤務した者。ライセンスは発行した州内のみ有効。従って、複数の州で不動産事業を行うためには州ごとにライセンスを取得する必要がある。ライセンス有効期間は各州の法令で決まっている。ライセンス取得試験に合格した者は、「National Association of Realtors (NAR) に加入する義務がある。
土地・不動産の所有権
日本不動産鑑定士協会連合会「アジアの不動産諸事情の調査結果」(2013年3月)(p.1~6)
土地・不動産の登記
日本貿易振興機構(JETRO)「<インド法務情報>土地取得前に確認すべき法的諸注意点」
不動産の鑑定評価
国土交通省「不動産鑑定評価基準の国際化に関する検討業務に係る調査報告書」(2011年3月)(p.83)
一定規模以上の土地開発・建物建設を伴う不動産業については、政府ガイドラインに従うことを条件に、自動認可で100%まで外資出資が認められる。
未開発の土地の販売、建物の転売などについては認められていない。
建設開発プロジェクト(タウンシップの開発、住宅/商業施設の建設、道路または橋、ホテル、リゾート、病院、教育機関、レクリエーション施設、都市および地域レベルのインフラが含まれる)は、政府のガイドラインに従うことを条件に、自動認可で100%まで出資が可能。不動産事業、農家住宅の建設業、移転可能な開発権(TDRs)のトレーディング事業に従事している(または従事しようとしている)企業に、外資は認められていない。不動産事業とは、土地等の固定資産の取扱いにより利益を得ることで、タウンシップの開発、住居・商業施設、道路や橋、教育施設、娯楽施設、都市・地域等のインフラやタウンシップの建設を含まない。 不動産を譲渡ではなく、賃貸またはリースし、所得を得る場合、不動産事業とはされない。 なお、不動産仲介企業は不動産事業とはされず、自動認可ルートで100%出資が可能。
一定規模以上の土地開発・建物建設を伴う不動産業については、政府ガイドラインに従うことを条件に、自動認可で100%まで外資出資が認められる。 未開発の土地の販売、建物の転売などについては認められていない。
不動産プロモーターは、見込顧客に対して不動産の売却を申し込む前に、居住用か商業用かを問わず、原則として一切の不動産プロジェクトを規制当局に登録する義務を負うこととなった。不動産プロモーターとは、大まかに言って、売却目的で土地又は建物を開発する者(会社等)、又は売却目的で土地又は建物を開発する開発当局その他の公的組織をいう。また、不動産プロジェクトとは、全部又は一部の売却を目的として、①建物又は賃貸マンションを構成する建物を開発すること、②既存建物の全部又は一部を賃貸マンションに改造すること、および③土地を小区画化することをいう。上記登録義務により、規制当局は不動産プロジェクトを網羅的に監視できるようになった。
一般に買主を守る制度がある。
中古住宅取引において不動産業者がインスペクション費用を負担する。
取引後に瑕疵が発見された場合、双方による話合いによって解決を試みる。不動産業者に責任があるとされる。
2016年3月25日に不動産取得者の保護を拡充する目的で、2016年不動産(規制・開発)法(以下「本法」という。)を制定。 本法により、不動産プロモーターは、開発した不動産の構造上の欠陥が顧客への引渡し後5年以内に発見された場合、当該欠陥を発見した旨の通知を受けてから30日以内に、無償で当該欠陥を是正する義務を負うこととなった。
本法は、これまでの行き過ぎた売り手優位の不動産市場や不透明な商慣行の是正、そしてインド中で多発する工期の大幅な遅延を解消する目的で制定された。全州で共通するRERAのポイントとしては、以下の規定が挙げられる。
・原則500平方メートルあるいは8世帯以上の建築:プロジェクトが行われる州のRERA当局(州が設立した担当組織)への登録義務化
・販売代理店(法文ではReal Estate Agents):州のRERA当局への登録義務化
・工期順守の徹底と罰則規定
・購入者から得た資金の使途の制限
加えて、2013年土地収用法は政府による土地収用について規制をしており、その際の手続き及び立ち退きを要求された者の補償等につき定めている。 州法では、賃貸料規制、ゾーン規制等が定められている。
2016/17年度(16年4月~17年3月)予算案にて、低価格住宅に関して不動産開発業者、購入者、投資家の全てが恩恵を受ける施策を政府は打ち出した。国内の4大都市では最大30平方メートル、そのほかの都市では同60平方メートルまで住宅建設による利益の免税を認めることを盛り込んだ。2022年までに全国民が住宅を購入できるようにする構想の一環。
350万ルピーまでの住宅について、年間5万ルピーの住宅ローン利払い分について税金を控除する方針。
全般
スターツインディアHP「国・地域別に見る >輸出入・海外進出の実務 >デリーの住宅の種類と住宅選びのポイント&契約の手順」
不動産を取引する際の制度
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る インド 外資に関する規制」
消費者保護(インスペクション、瑕疵対応、その他)
TMI総合法律事務所「2016年不動産(規制・開発)法」
Real Estate(Regulation andDevelopment)Act,2016「」
不動産行政の方向性
不動産金融
Reserve Bank of India「Frequenty Asked Questions Housing Loans」
不動産の市場価格または実際の売買価格の高い額、または賃貸の予定支払総額に対して、一定の印紙税(Stamp Duty)および登録免許税(Registration Fee)を支払う。住宅の賃貸サービスはサービス税の対象外となっている。
地方税で州によって課税率などが異なるが6~12%の範囲。
地方税で州によって課税率などが異なるが1~3%の範囲。上限額が1~2万ルピーと設定されていることが多い。
インドの固定資産税は、州政府や市当局など地方自治体の管轄となる。固定資産税は不動産の査定価格に基づいて課され、税率も地方によって違いがあるものの、一般的に1.0~5.5%程度と言われている。
1989年、日印間で租税条約が締結されている。
源泉課税率は利子所得が10%、使用料および技術上の役務は10%である。
不動産取得に関する税制
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る インド 税制」
野村総合研究所調べ(2021年2月)
不動産保有に関する税制
日本不動産鑑定士協会連合会「アジアの不動産諸事情の調査結果」(2013年3月)(p.7)
その他税制(租税条約等)
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る インド 税制」
外国企業のインド法人、支店およびプロジェクト・オフィスによる不動産の購入は可能。駐在員事務所については不可。外国人の個人所有 は認められていない。
土地売却による代金の海外送金の際は、インド準備銀行(RBI)への事前許可が必要となる。
不動産業に対する許認可制度はない。
〔外国人就業規制〕
外国人の就業規制は特段ない。
〔在留許可〕
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る インド 外資に関する規制」
主要都市等におけるマーケット情報
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 投資コスト比較」
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