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土地法4条で土地は全人民の所有に属すると規定しており、所有者を代表する国家が統一的に土地を管理している。しかし、同法で土地の「使用権」は永久使用権として売買されている。
また、建物に関しては所有権を認められ、土地の利用権者と異なる建物保有者も認められている。また、建物の保有者と利用者が異なることも可能で、建物賃借権が認められている。
土地、建物の使用権の取得方法としては、土地使用権の割当て及び譲受け、 国からのリース、建物の所有権、建物賃借権の取得による方法がある。
土地使用権の贈与、相続、売買、賃貸、抵当などの契約の際には土地使用権登録所での「登録」がなされる。
天然資源環境省は2014年5月19日にCircular 17/2009/TT-BTNMTに代わりCircular 23/2014/TT-BTNMTを発効し、土地使用権証書、家屋所有権証書、およびその他資産の所有権証書(「レッドブック」)に関するガイドラインを公表した。
Circular 23はCircular 17よりレッドブックへの記入方法について細かく規定されているが、他の内容はほぼ同様である。具体的には、土地、家屋、およびその他資産を譲渡、贈与、賃貸、または資本拠出するとき、土地使用権保有者は管轄当局に登録を行う必要がある。
その申請書類は譲渡、賃貸、資本拠出の契約、 土地、家屋、その他資産の所有権に関する書類(土地使用権証書、家屋所有権証書、およびその他資産の所有権証書)となる。必要書類を完成後、土地使用権保有者は申請書類を土地使用権証書登録局とその他管轄当局に提出する。また、海外在住ベトナム人やベトナム滞在外国人の土地使用権と関連する情報は天然資源環境省の公式ウェブサイト上で公知される。
不動産鑑定士はベトナム鑑定協会(VVA:Vietnam Valuation Association )から認証される。VVAは政府機関ではないが、財務当局(Ministry of Finance)の援助を受けて試験を実施し、メンバーシップを与えている。不動産鑑定基準は、財務当局とVVAが発行している。
VVA会員となっている不動産鑑定業者数は47社、不動産鑑定士は246人である(2016年8月)。会員以外を含めると、不動産鑑定業者数は217社、不動産鑑定士は1017人である。(2017年1月:財務省に登録されているリストに基づく)
国際評価基準IVSに準拠したベトナム鑑定基準VVS(Vietnamese Valuation Standard)がある。
土地評価は2004年から実施。都市の土地、農村土地、農地、林地を対象としており、毎年各地方は中央政府へ詳細な地価情報を提供しているが、実際の公示地価は市場価格の3~6割といわれる。
ベトナムの住宅管理会社は、建設省住宅・不動産市場管理局又は各市建設局より事業許可を取得する必要があり、2021年11月時点で許可が確認されている住宅管理会社の企業数は以下の通りである。
建設省の住宅・不動産市場管理局における許可企業
ホーチミン市:35社
ハノイ市:98社
ダナン市:2社
ハイフォン市:1社
各市 建設局における許可企業
ホーチミン市:43社
ハノイ市:非公開
ダナン市:非公開
ハイフォン市:非公開
※ホーチミン市 建設局の許可企業のリストは毎月更新されているようであるが、建設省の住宅・不動産市場管理局における許可企業のリストは2017年から更新されていない。
※事業許可は法令上必須であるが、HP上での公開の是非については、企業毎の判断となる。
•デベロッパーが建物の竣工引き渡しに合わせ、管理会社へ管理業務を委託する。通常、デベロッパーのグループ子会社が引き受ける形が一般的である。 引き渡しの際に、デベロッパーは管理組合に対して修繕積立基金を支払うこととされている。 基金は販売額の 2%程度とされており、共有部分の修繕費用等に充当される。
•管理委託契約は、管理組合と管理会社間において締結される。管理会社は管理委託契約に基づき、管理業務、警備業務、清掃業務等を提供し、区分所有者より管理費を受領する。
•一般的に、日常的な支出は一般口座で保管され、修繕積立基金は基金用口座で保管されるが、明確な法規制は存在しない。なお、基金用口座の運用は一般的には行われていない。
•不動産管理業は 投資法( 61/2020/QH14 )において、条件付き経営投資分野 に指定されており、不動産事業法(76/2015/NĐ CP )に記載される内容を遵守する必要がある。
•不動産事業法においては、不動産管理業を営む場合、現地会社を設立する必要がある。また、 住宅管理を行う場合は関連規定に則り、政府当局から事業許可を取得する必要 がある。
•住宅管理会社には①技術部門、②カスタマーサービス部門、③セキュリティ部門、④清掃部門という4つの部門を設ける必要がある。さらに、建設省が指定する住宅管理講座を受け、 修了書を得たスタッフを 20 名以上採用する必要 がある。
•事業許可を申請する際には、上記の 4 部門を設置する決議書や従事する各部門の従業員の名簿に加え、取締役、部門長、従業員の保持する学位・マンション管理講座修了書の複写を提出する必要がある。
•事業許可は建設省住宅・不動産市場管理局又は地方政府・建設局のいずれかより取得 する必要がある。
「ベトナム六法」
2006年から「不動産営業ライセンス」(日本の宅地建物取引主任者資格に相当)および「宅地建物ライセンス」(日本の宅地建物取引業免許に相当)が必要とされるようになった。しかし、不動産取引の大半は個人間で行われており、無資格・有資格のエージェントも多数存在する模様。不動産仲介会社として営業するには、免許を得た個人が最低2名いないと開業できない。それ以上人数が会社にいる場合でも、2名が免許を取得していれば開業できる。ただし、各店舗には最低1名免許取得者がいないと営業できない。この個人への免許は、建設省(Construction Department)から出される。
不動産免許を許可する条件として以下があげられている。
また、2014年投資法の修正・補則法No.03/2016/QH14が公布され、同法に基づき、アパートの運営管理サービスが規制業種に新たに加わった。
土地・不動産の登記
不動産の鑑定評価
国土交通省「 不動産鑑定評価基準の国際化に関する検討業務に係る調査報告書 」(2011年3月)(p.83)
その他項目
国土交通省「 アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務報告書 」(2012年)
日本不動産鑑定士協会連合会「 アジア不動産諸事情の調査結果 」(2013年)
「経済成長を背景に加速する都市開発-ベトナム・ホーチミン市の不動産事情レポート」「月刊不動産流通」(2010年12月)
不動産を譲渡、担保設定その他処分する契約は、契約当事者の双方によって署名されなければならず、かつ、ベトナムの公証人によって公証されなければならないとされている。しかし、契約書によらない取引も実態上存在する。
マンション等を購入する富裕層は現金で買うのが一般的で、また分割で物を買う習慣がなかったが、現在では一部銀行での住宅ローンの取扱やデベロッパーが購入者に対して銀行ローンを提供する事例も多くなっている。
現状では現地の銀行でローンを組むことが難しく、日本の銀行で融資を受けるしかない状況である。日本の銀行で融資を受ける場合は、円で借入をしてベトナムドンの資産を保有することになるため、為替変動リスクが伴うことには留意する必要がある。 なお、マンションは近年、投資用マンションの供給が急増しているため、供給過剰リスクの懸念がある。
建物賃貸借の期間の上限・下限は定められていないが、住宅は1年が一般的。建物の賃貸借のうち期間が6カ月以上のものについては、原則として書面による契約、公証及び当局への登録が必要となる。賃貸人が業として不動産業を行う者である場合には、当局への登録は不要と解されている。
商慣習として契約期間中の途中解約は、違約金として保証金が没収されるのが原則。但し、契約の際、例えば1~2か月前の解約予告をした場合や、途中解約でも保証金を返金するという特約を付けられるケースもある。
不動産を取引する際の制度
粟津卓郎・岩井久美子・金子広行・レトラントゥガー「ベトナム法務ハンドブック」中央経済社(2013年9月)
消費者権利保護法(西村あさひ法律事務所)
不動産を譲渡、担保設定その他処分する契約は、契約当事者の双方によって署名されなければならず、かつ、ベトナムの公証人によって公証されなければならないとされている。しかし、契約書によらない取引も実態上存在する。
付加価値税(Value Added Tax)は、一般的に標準税率が 10%、軽減税率は5%及び0%となっている。土地使用権の譲渡と国が所有する住宅の借主への売却は非課税取引となる。一般的に住宅に対する付加価値税は(住宅価格?土地使用権の譲渡価格)の10%が課税される。
実際の移転価格の0.5%が課税される。
不動産を譲渡する側に、譲渡益の 25%または取引額の2%の個人所得税(キャピタルゲイン)が課税される。2009 年までは、土地の使用権の譲渡に際して、譲渡価格の4%が課税されていたが、現在は無効となっている。
土地税は非農地税法によるもので、2012 年以降家屋・アパートの土地について、所有者に 0.03%~0.15%の累進課税が課せられるようになった。
固定資産税は、地方政府が課税しているもので税率等は地方によって異なる。
外資系企業等に対して、財産税の一種である土地使用権の賃借料である土地使用料が課せられる。通常は土地リース料として認識されており、料率は地域、周辺の産業基盤の整備状況、会社の業種などによって大きく異なってくる。
1995年に日越二重課税防止協定を締結。
不動産取得に関する税制、不動産保有に関する税制
国土交通省「 アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務報告書 」(2012年)(p.86, 87)
その他税制(租税条約等)
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る ベトナム 税制」
財務省発行2013年11月6日付の通達156/2013/TT-BTC「GUIDING THE IMPLEMENTATION OF SOME ARTICLES OF THE LAW ON TAX ADMINISTRATION; LAW ON AMENDMENTS TO A NUMBER OF ARTICLES OF THE LAW ON TAX ADMINISTRATION AND GOVERNMENT'S DECREE NO. 83/2013 / ND-CP」
外務省「日越二重課税防止協定」
ベトナムでは、土地は国民の共有財産であるとともに、政府の管理下に置かれている。政府が土地を使用する者に土地使用権を付与する。外国の組織は、外交の機能を営むものを除き、土地使用権の付与の対象にはならない。外国の組織が土地使用権者から転借することは可能である。
他方、外資系企業は、次の特定の場合には土地使用権を取得することが可能である。
2015年7月1日から施行された改正住宅法で、企業など外国の組織と外国人に対する住宅の所有制限が一部緩和された。ベトナムに入国を許可された外国人は住宅を所有でき、賃貸も条件付きで可能となった。ただし、所有率は集合住宅1棟当たり30%までで、1戸建ても1つの町村で250戸を超えてはならない。また、購入できるのは、住宅建築プロジェクトにおいてのみで、既存の一般住宅街では原則認められない。
ベトナム政府は、ベトナムへ投資する外国企業に対して優遇措置を用意している。投資プロジェクトの土地使用の期間は50 年を超えないものとなっているが、投資額が大きくて資本の回収に時間がかかるプロジェクトや社会的・経済的条件が困難な地域への投資プロジェクトについては70 年を超えないものに緩和される。
外国人がアパートやマンションを購入する場合には、所有権の存続期間は50年(延長可能)であり、居住以外の投資目的等で購入することはできない。また購入することが できる外国人の要件にも制限がある。購入可能な外国人は「ベトナムで入国許可を得た者で、外交特権を有しない者」とされている。
改正投資法61/2020/QH14では、不動産業の法定資本規制については廃止された
ベトナム国内で就業する外国人は次の条件を満たさなければならない。
ベトナムに勤務する予定日の15日前に企業は外国人に労働許可書を申請しなければならない。
尚、次の特定のケースにおいて、労働許可書発給の対象とされている。
2016年2月3日付で政府は、ベトナムで就労する外国人労働者に関する労働法の一部の詳細規定および実施ガイダンスに関する政令11/2016/NDCPを発行した。また、同政令を改正し補充するため、2018年10月8日付政令140/2018/NDCPが発行されている。 なお、2021年1月1日の改正労働法45/2019/QH14の施行に伴い、政令11/2016/NDCPおよび政令140/2018/NDCPを含む労働法10/2012/QH13の関連法令については、今後新たに政令等が制定される予定。
外国人はベトナムへの出入国にあたり、ベトナムの認可当局が発行したビザを提示する必要がある(日本人については、観光あるいは商用でベトナムに15日以内滞在する場合、ビザ取得は免除)。目的により、シングルビザもしくは最長60カ月のマルチ(複数回入国)ビザがある。また、就労、商用などビザを持っている外国人は、一時在留証明書を取得することができる。有効期間は労働許可証、ビザの有効期間と同様で1年から5年であり、この期間中はビザの取得が免除される。
労働許可に関しては政令11号では、労働許可書発行が不要となるケースについて、社長、管理者、専門家、技術者として連続で30日まで、1年間のうち計90日までの期間で就労する外国人労働者、販売活動・生産経営に影響を与える事故や複雑な技術上の不測の事態を処理するため、3ヵ月未満滞在するケースでは、労働許可書発行が不要となる。
外資に関する優遇措置もしくは規制
日本貿易振興機構(JETRO) 「国・地域別に見る ベトナム 外資に関する規制」
国土交通省「 アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務報告書 」(2012年)(p.85)
外資参入の許認可制度
粟津卓郎・岩井久美子・金子広行・レトラントゥガー「ベトナム法務ハンドブック」中央経済社(2013年9月)
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る ベトナム 外資に関する規制」
就労ビザ、長期滞在について
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る ベトナム 外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」
DAZPRO LAW FIRM「改正投資法」
国際協力機構(JICA)「ベトナム 2019 年労働法(法律番号 45/2019/QH14)」
不動産取引に関する情報は公的には整備されていない。不動産コンサルタント会社は、銀行からの取引情報などを元に独自にデータベースを作成している。
主要都市等におけるマーケット情報
日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 投資コスト比較」
取引情報、物件情報のデータベース化
NNA調べ(2016年8月)
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