タイ

不動産に関する法制度

不動産関連法・制度の現状
タイでは20世紀前半から、土地登記制度としてトレンスシステムの導入、土地登記局の設立、民商法典の制定、土地法の制定等が進められてきた。
民商法典は、物的財産に関する一般規定を定めている。土地法典は、測量、証書の発行、登記等の技術的事項を定めている。
土地・不動産の所有権
建物は、土地とは別個の不動産として所有権の対象となり、土地の所有者と異なる第三者が所有することも可能である。建物の売買を行う際には、土地事務所において当事者間で所定の売買契約証書に署名する。30日間の公告期間を経て、土地事務所から売買証明書が発行されることにより、売買の効力が発生する。

不動産に関する権原は(1)所有権(民商法 1335 条以下)、(2)賃借権(民商法 537 条以下)、(3)使用貸借(民商法 640 条以下)、に分類される。

不動産の賃貸借は、期間30年上限が原則だが、さらに30年の更新オプションを付与することができる。3年を超える不動産賃貸借契約に法的拘束力をもたせるためには、登記が必要になる。

商工業用不動産賃貸借法(Act on Lease of Immovable Property for Commercial and Industrial Purposes B.E.2542 (1999年))により、2千万バーツ以上の投資を行う商業であること、投資奨励法上の奨励対象の工業に該当すること、などの条件を満たす商工業用に限り、賃貸借期間は50年まで延長できる。
土地・不動産の登記
1901 年に近代的土地登記制度であるトレンス・システム(Torrens System)が導入され、土地権原証書の発行制度が設置された。
現在の、登記制度は、完全な所有権を証明するためには権利証書(Chanote)によるのが原則である。しかし、権利証書はすべての土地で発行されているわけではなく、その他の各種証明書が代替的に利用され、登記制度が補完されている。

ア) 権利証書
権利証書(Chanote、NS4とも言われる)は、土地の完全な所有権を証明する証書で、管轄の土地事務所(Land Office)により原本が2部発行され、1部が土地の所有権者に交付され、もう1部が当該土地事務所に保管される。実務的には、管轄の土地事務所において登記官の面前で所定の売買契約証書に両当事者が署名し、その場で登記申請を行う。

イ) 確認済使用権証明書
確認済使用権証明書(Ngor Sor Saam Gor、NS3G)は、土地の使用権を証明する証書で、当該証書が発行されている土地は、使用権について、権利証書と同様に、書面による合意及び土地事務所における登録によって売買や抵当権の設定を行うことが可能である。

ウ) 使用権証明書
使用権証明書(Ngor Sor Saam、NS3G)は土地の使用権を証明する証書で、確認済使用権証明書と異なる点は土地調査が未了であることである。売買に際しては、土地事務所に売買の意向を届け出た上で、30日間の公告期間を経て売買が登録される。

エ) 占有証明書
占有証明書(Sor Kor Neung)は占有を証明するための証書であり、所有権を証明するものではない。この証書の保有者は、物理的な占有を第三者に移転することは可能であるが、土地を法的に売買することはできない。この証書は、現在は新たには発行されておらず、使用権証明書の発行を受けるための有益な証拠資料として用いられる。

オ) 土地税納付証明書
土地税納付証明書(Por Bor Tor 5)は土地に関する税金を支払ったことの証明書であり、所有権を証明するものではない。これも使用権証明書の発行を受けるための有益な証拠資料として用いられる。

(2) 登記の効果
売買に際しては、書面による合意と登記が土地売買の効力要件となっている。
土地の売買を行う際には、当事者間で所定の売買契約証書に土地事務所において署名しなければならず、30日間の公告期間を経て、土地事務所から売買証明書が発行されることにより、売買の効力が発生する。
民商法( Civiland Commercial Code )上、売買等の法律行為による不動産又は不動産に関する物権の取得は、当該法律行為が書面によりなされ、かっ、登記されない限り無効とされており、書面による合意と登記が土地売買の効力要件となっている。
建物の売買を行う際には、当事者間で所定の売買契約証書に土地事務所において署名しなければならず、30日間の公告期間を経て、土地事務所から売買証明書が発行されることにより、売買の効力が発生する。

(3) その他
登記情報は公共の縦覧に供されている。しかし、登記制度は都市部では充実しているが、郊外では未登記土地も多い。なお、登記は弁護士によって行われている。
不動産の鑑定評価
タイの鑑定士は、民間団体であるタイ鑑定士協会(Valuers Association of Thailand (VAT))から、鑑定士「Valuer」として認可された一定のスキルを有した者であり、これは民間の資格となる。VATと名前が類似するタイ鑑定評価協会(Thai Valuation Association)という組織も存在するが、VATと共同で鑑定評価業界をとりまとめている。

不動産鑑定業者は約120社、不動産鑑定士約1,000人である。

鑑定評価基準について、以前はVATとTVAは別々の基準を発行していたが、現在は統一化が図られている。

タイの鑑定業界は政府の関与がないため、IVSの導入は遅れているが、近年、タイ証券監視委員会(Security and Exchange Commission, SEC)によって、評価基準が若干改正されたほか、鑑定業界内ではIVSを導入すべきとの意見が出始めている。
法制度が確認できるWebサイトの紹介
Thailand Board of Investment(BOI)
 ┗海外投資に対するワンストップサービスの提供

Department of Lands
 ┗不動産登記の記録・管理を所掌

Thai Valuers Association(TVA)
 ┗不動産鑑定士の基準・倫理規定の作成、評価
不動産事業を行う際の免許制度
不動産業者の免許制度はないが、Department of Business Development the Ministry of Commerce.(事業発展局)に登録する必要がある。
外国人が不動産関連業者を設立することは可能だが、外国人事業法における規制業種第1種に土地取引が入っている。
事業発展局に登録せずにビジネスを行った場合、罰金、禁固刑等が課せられる。
なお、不動産業者の団体であるThai Real Estate Broker Associationがある。
出典

不動産関連法・制度の現状、不動産の鑑定評価:国土交通省「 不動産鑑定評価基準の国際化に関する検討業務に係る調査報告書 」(2011年3月)(p.81)

土地・不動産の所有権、土地・不動産の登記:国土交通省「 アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務報告書 」(2012年)(p.52〜57)

土地・不動産の所有権、土地不動産の登記、井上・佐藤(2012)「アジア諸国の不動産法制の基礎第3回 インド、タイ」ARES不動産証券化ジャーナルVol.09,PP54

不動産の鑑定評価:日本不動産鑑定士協会連合会(2013)『アジアの不動産諸事情の調査結果』,pp9-12

不動産の取引に関する制度

不動産を取引する際の制度
土地を売買する時は、土地局の登記官の面前において、公式の契約書様式に売買契約をまとめ、売り手と買い手が署名し、さらに登記官が署名して公印を押す。
消費者保護(インスペクション、瑕疵対応、その他)
買主と、売主は消費者保護法で守られている。
Real Estate Professionals Trade Associationが、「200 point Pre-Purchase inspection」というインスペクションサービスを行っている。
コンドミニアムについては、事業者に対して構造部分について5年間、非構造部分について2年間の瑕疵保証期間が課せられている。
不動産行政の方向性(新築・中古、長期・短期、持家・借家)
住宅を初めて購入するものに対して2年間住宅ローンの金利をゼロとする商品(2011年実施)等、政府住宅銀行において持家優遇施策が実施されている。
土地・不動産に関する担当省庁はLand Development Departmentである。
不動産金融(住宅ローンの実態、ローン審査、担保評価)
住宅購入時には2〜3割程度が住宅ローンを利用し、変動金利が主で、2011年新規貸し出しのうち商業銀行が6割,政府住宅銀行3割となっている。
外国人による不動産購入については現地通貨以外での海外送金が要求されるため、原則できない。そのため、住宅ローンを利用する場合はタイにある外国銀行の窓口を通じて申し込み、国外でローンを組む必要がある。
住宅ローン利用時には不動産鑑定人の鑑定評価による不動産担保価値の審査がある。鑑定評価は売り手買い手双方からのニーズがある。これら鑑定業務は投資用不動産の時価評価、担保評価等で需要はあるが、不動産鑑定業者が関連業務の法人を設立する際の規制は無い。
不動産のリース(期間、延長・解除の是非)
賃貸住宅の標準的な契約期間は1年で、契約終了時に、貸主の合意があれば、借主は期間を延長できる。
契約期間中に貸主は、契約を解除でき、貸主の立場が圧倒的に強いため、貸主による一方的な解約通知の際にも、借主に対する補償はない。借主も契約期間中に契約解除ができるが、ペナルティとして差し入れた一時金(住宅だと2カ月が標準)の返還ができなくなる。
なお、賃貸住宅の契約は普通借家契約となっている。
出典

不動産金融:「拡大するタイの住宅金融」野村資本市場クォータリー2013Spring,pp126-136

不動産に関する税制

不動産取得に関する税制
〔特定事業税〕
Credit Foncier Companies(住宅金融会社)は利息、割引料、手数料、証券・社債等の売買利益にかかる総収入金額が課税標準となり、税率は 3.0%である。
不動産販売業については経費控除前の総収入金額が課税標準となり、税率は 0.1%である。

〔印紙税〕
土地、建物等の賃貸借契約においては、契約期間の賃料1000バーツごとに1バーツの印紙税が課せられる。印紙税負担者は貸主であり消込者は借主である。また売買契約も含む領収書においては、200バーツの領収額ごとに 1バーツの印紙税が課税される。印紙税負担者は領収書の発行者であり、消込者も発行者となる。

〔キャピタルゲイン税〕
贈与の場合と贈与以外の場合で課税方法が異なる。
贈与等により取得した不動産の譲渡益については、その譲渡金額の50%相当額を低額(率)控除することが認められる。そして、残余の金額(正味取得金額)を保有年数で乗じた上、個人所得財率表に基づき単年度あたりの税額を計算し、それに保有年数を乗じて納付すべき個人所得税額を算出する。
贈与以外の場合、保有年数により控除率は1年所有の8%から8年以上所有の50%まで変動し、正味所得金額に税率を掛けて所得税率となる。個人所得税額の上限は20%である。

[特別事業税]
不動産売却時には不動産の売値または評価地価の高い方の3.3%が課税される。

不動産保有に関する税制
〔土地家屋税(LAND AND BUILDING TAX)・
 地域開発税(LAND DEVELOPMENT TAX)〕

土地・家屋の所有者が指定地域にいる場合、毎年、地域開発税法あるいは建物土地税法のいずれかの規定に基づいて課税される。
税率は、毎年の想定賃貸料相当額の12.5%。ただし、所有者が自分で住むための土地、家畜用の土地、耕作用の土地は対象外。
想定賃貸料は実際の賃貸料もしくは建物が賃貸中の場合は所管の税務署員が見積もる想定賃貸料。
その他税制
(租税条約等)
1963年に日タイ租税条約を締結。

源泉税率は配当金10%、利息15%、ロイヤルティ15%。ただし、金融機関への利息支払については10%に軽減。
出典

不動産取得に関する税制、不動産保有に関する税制:国土交通省「 アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務報告書 」(2012年)(p.60〜64)

不動産保有に関する税制、その他税制(租税条約等): (独)日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る タイ 税制

タイ王国政府投資委員会事務局(2009, 2011)『タイ投資の手引き』
http://ohana-int.com/Real_Estate/Chiangmai/index.html
http://www.hasco21.com/jp/tochi3.htm
http://www.starts.co.jp/thailand/house/select.php#order
http://www.rising-asia.net/investment/index_ja.php
http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation/thai2.html
http://www.listsothebysrealty.co.jp/global/service/faq.html#qa_thai

不動産取引に関する外国人及び外国資本に対する規制

外資に関する優遇措置もしくは規制
原則として、外国人(法人も含む)は土地を取得できない。ただし、BOI奨励企業や、タイ工業団地公社(IEAT)認定の工業団地に立地する企業の場合は、外資比率にかかわらず土地取得が可能である。なお、1999年5月に改正された土地法では、4,000万パーツ以上の投資などの条件を満たした場合は、居住用にlライ(1,600平方メートル)以下の土地の取得が可能としている。
また、投資奨励法(Investment Promotion Act B.E. 2520(1977))上の奨励対象企業の場合は、外資比率にかかわらず、投資委員会が定める条件に従い事業活動に必要な土地を所有することができる。さらに、工業団地公社(IEAT)認定企業も、外資比率にかかわらず土地を取得できる。
なお、外国人による建物の所有は禁じられていないため、外国人が土地を借りた上で、賃貸借契約の規定に従って土地上に建物を建築して所有することは可能である。
外資参入の許認可制度
不動産業に関する免許制度は存在しない、あるいは有名無実化している状態である。ただし、営業するにはDepartment of Business Development ,Ministry of Commerce(事業発展局)に登録する必要がある。
就労ビザ、長期滞在について
外国人による不動産の取引について
外国企業(外国資本50%以上)の参入が禁止されている9業種に、土地取引が含まれている。
出典

外資に関する優遇措置もしくは規制、外資参入の許認可制度:国土交通省「 アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務報告書 」(2012年)(p.57〜60)
(独)日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る タイ 外資に関する規制

主要都市等における不動産マーケット情報

主要都市などにおけるマーケット情報
■ 工業団地(土地)購入価格
 チョンブリ県工業団地、一般工業区 132米ドル/m²

■ 工業団地借料
 チョンブリ県工業団地、一般工業区 6.36〜6.97米ドル/m²月

■ 事務所賃料
 バンコク:タイムズスクウェア 18米ドル/m²月
 バンコク:エクスチェンジタワー 24〜26米ドル/m²月

■ 市内中心部店舗スペース/ショールーム賃料
 バンコク:ゲートウェイエカマイ 45〜76米ドル/m²月
 バンコク:シーロムコンプレックス 76〜91米ドル/m²月

■ 駐在員用住宅借上料
 バンコク:スクンビット地区 1,782米ドル/月(サービスアパート、メイドサービス付、97m²)
 バンコク:スクンビット地区 2,574米ドル/月(アパート、160m²)
(調査2014年12月〜2015年1月)
取引履歴・物件情報などのデータベース化
政府機関が管理する Real Estate Information Center(REIC) というデータベースが存在する。ただし、このデータベースは REIC の会員のみが使用可能である。

下記は、一般的にも閲覧が可能である。
http://www.knightfrank.co.th/research/results.aspx?typeid=research&divisions=2&isocodes=TH&view=grid#nolink
出典

主要都市等におけるマーケット情報: (独)日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別に見る 投資コスト比較

取引履歴・物件情報などのデータベース化:国土交通省「 アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務報告書 」(2012年)(p.58)

不動産業者に関する情報

業界団体
主な国内不動産業者
不動産業(住宅販売等を含む)を展開する主な日系企業
・スターツコーポレーション(株) ・積水化学工業(株) ・三井不動産(株)
・三菱地所(株) ・住友不動産(株) ・(株)レオパレス21 等




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