1)持続可能な開発目標SDGsの取り組み
水供給は公衆衛生と生活環境を改善するために不可欠な社会インフラです。
2015年には、世界中で6.63億人の人々が給水サービスのない湧き水や地表水を含む改善されていない飲料水源を使用していると推定されていました。
この状況に対しては、新しいグローバルアジェンダ「持続可能な開発目標SDGs」が2015年に国連加盟国によって満場一致で採択されました。
このアジェンダは、2030年において、全ての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保することを目標とする、水に関する特定の目標SDG6が含まれています。
あわせて、飲料水の世界的、地域的及び国家的進捗の定期的な推定値を作成してきたWHO/UNICEF Water Supply の共同モニタリングプログラムは、SDGs時代に飲料水の監視を強化する新しい給水サービスラダーを取り決めました。この基準は開発の様々な段階にある国が時間の経過とともに基準に従った評価を行い、進捗を比較できるように作られています。
家庭向け給水サービスのための新しいWHO/UNICEF共同モニタリングプログラムラダー
出典: Safely managed drinking – water Thematic report on drinking – water 2017, WHO, UNICEF
給水サービスレベル | 定義 |
安全に管理された 給水サービス |
改善された水源で、敷地内にあり、必要な時に入手可能で、糞便性指数や優先度の高い化学物質指標の汚染がない。 |
基本的な 給水サービス |
配管給水、深井戸、保護された浅井戸、湧水、雨水(改善された水源)。 往復、待ち時間含め30分未満の水汲み。 |
限定的な 給水サービス |
改善された水源であるが、待ち時間含め往復30分以上の水汲み。 |
改善されていない 給水サービス |
保護されていない湧水・浅井戸。 |
サービスなし | 河川、ダム、湖、池、渓流、運河、灌漑用水路 |
この目標達成に向けて取り組んだ結果、2017年現在、117国(及び8つのSDG地域のうち4つ)には、安全に管理された給水サービスの推定値があり、世界人口の38%を占めています。
53億人の人々が(改善された飲料水の)安全に管理された給水サービスを利用するようになりました。
更に、14億人が少なくとも(改善された飲料水の)基本的な給水サービスを利用するようになりました。
2.6億人が(改善された飲料水の)限定的な給水サービスを利用するようになりました。
一方で、4.35億人が改善されていないサービスを利用し、1.44億人は依然として給水サービスのない湧き水や地表水を利用しています。
地域毎の飲料用水普及率の動向2000-2017
出典: Progress on household drinking water, sanitation and hygiene 2000 - 2017, WHO, UNICEF
80ヶ国で99%を超える(改善された水の)基本的な水の普及率がありました。
3ヶ国に1ヶ国で(改善された飲料水の安全に管理された給水サービスの普及率が)99%未満であり、2030年までに全世界で普及できるようになります。
安全に管理された給水サービスを利用できる人々の割合(2017年)
出典: Progress on household drinking water, sanitation and hygiene 2000 - 2017, WHO, UNICEF
厚生労働省は、水道に関する、今から50年後、100年後の将来を見据えた当面の間の取り組みを示した「新水道ビジョン(2013年3月)」を策定した。このビジョンにおける3つの理想像のひとつの「水道サービスの持続」において「国際展開」の取組が掲げられており、SDGsの目標達成に貢献しています。
2)水道分野の国際協力
日本は、組織、政策、システム、情報やデータ、更に水と衛生の広範囲なパートナーシップイニシアティブ(WASABI)2006、水と衛生分野に関するODA大綱のもとに、能力開発の重要性を強調しています。
技術専門家の派遣や職員の訓練などの技術協力は、上記の方針を実施するための措置です。
二国間ODAのうち、技術協力、無償資金協力、有償資金協力の詳細については以下で説明します。
水道分野における国際協力に関するプロジェクトのほとんどは、独立行政法人国際協力機構(JICA)によって実施されています。
ODAの枠組み
出典:JICA PROFILE(2019.10)
各国の水道が、安全で良質な水を継続して供給し続けることができるようにするためには、その国の自然的社会的条件などに適合した水道施設を設け、それを管理できる人材を育成し、水源の水質や施設の特性に応じて適切に管理しなければなりません。
このような観点から、厚生労働省では、独立行政法人国際協力機構(JICA)からの依頼を受けて、厚生労働省が水道事業者や関係団体の協力により、同機構に対し専門家を推薦するという形で水道に関する専門家の派遣を行っています。
水道分野の専門家派遣数(人)の推移(厚生労働省推薦分)
年度 (平成/令和) |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 01 | 02 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
長期 | 5 | 4 | 9 | 7 | 6 | 8 | 6 | 5 | 10 | 9 | 8 |
短期 | 27 | 30 | 45 | 49 | 29 | 29 | 33 | 35 | 16 | 16 | 0 |
合計 | 32 | 34 | 54 | 56 | 35 | 37 | 39 | 40 | 26 | 25 | 8 |
国名 | 案件名 | 専門家所属 | 担当業務 |
---|---|---|---|
カンボジア | 水道行政管理能力向上プロジェクト | 厚生労働省 | チーフアドバイザー |
北九州市上下水道局 | 水道技術 | ||
マラウイ | リロングウェ市無収水対策能力強化プロジェクト | 横浜市水道局 | チーフアドバイザー /無収水管理 |
ミャンマー | ヤンゴン市 水道行政・水供給アドバイザー | 福岡市水道局 | 水道行政・水供給 |
ラオス | 水道事業運営管理能力向上プロジェクト(MaWaSU 2) | さいたま市水道局 | チーフアドバイザー |
川崎市上下水道局 | サブチーフアドバイザー /水道技術 |
||
サブチーフアドバイザー /水道技術 |
|||
東ティモール | 給水改善アドバイザー | 千葉県企業局 | 給水改善アドバイザー |
合計 | 7団体 | 8名 |
国名 | プロジェクト名 | 協力開始日 | 協力終了日 |
---|---|---|---|
パキスタン | パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクトフェーズ2 | 2021/02 | 2024/02 |
政府開発援助は、相手国の自主的な努力を支援し開発を援助するものです。また、開発途上国との友好関係を築きあげるためにも、途上国における「人づくり」が極めて重要であり、かつ効果が高いといわれています。
このような観点から、いくつかの研修制度が設けられており、独立行政法人国際協力機構(JICA)の行う水道技術者集団研修・個別研修などにより研修員の受入を行っています。
年度(平成/令和) | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 01 | 02 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
JICA課題別研修 | 76 | 69 | 65 | 81 | 100 | 136 | 132 | 144 | 83 | 113 | 31 |
JICA個別研修等 | 100 | 121 | 115 | 89 | 52 | 26 | 61 | 38 | 21 | 84 | 13 |
種類 | 案件名 | 主要協力機関 | 人数 | |
---|---|---|---|---|
課題別研修 | アフリカ地域 都市上水道技術者養成 | 横浜ウォーター(株) | 7 | |
上水道施設技術総合:水道基本計画設計(A) | (公社)日本水道協会 | 3 | ||
水道管理行政及び水道事業経営(A) | (公社)国際厚生事業団 | 21 | ||
国別研修 | リロングウェ市無収水対策能力強化プロジェクト(マラウイ) | 横浜市水道局 | 10 | |
水道行政管理能力向上プロジェクト(カンボジア) | (公社)日本水道協会 | 1 | ||
水道事業運営管理能力向上プロジェクト(MaWaSU 2)(ラオス) | (公社)日本水道協会 | 1 | ||
無収水削減能力向上プロジェクト(ケニア) | 横浜ウォーター(株) | 1 |
開発調査とは、水道事業を実施するに当たっての事業着手の妥当性についての調査のことで、日本でいえば、水道事業の認可申請の際に行われる調査のようなものです。
この調査の結果、水道事業の開始が妥当と判断されると、水道計画が立てられ事業が開始されます。
開発途上国に返済義務を課さない資金を供与しています。この資金は開発途上国の安全な飲料水確保などのために必要な資材、機材、設備などの購入等に利用されています。
年度 (平成/令和) |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 01 | 02 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
件数 | 18 | 14 | 11 | 14 | 9 | 10 | 2 | 6 | 4 | 4 | 13 |
金額(百万円) | 21,796 | 15,773 | 10,500 | 19,054 | 11,387 | 18,861 | 7,964 | 9,435 | 11,551 | 9,218 | 16,951 |
※JICA調べ
国名 | 案件名 | 金額(百万円) |
---|---|---|
パキスタン | ファイサラバードにおける浄水場及び送配水管網改善計画 | 4,094 |
バングラデシュ | コックスバザール県テクナフ郡におけるホストコミュニティ 及びミャンマーからの避難民のための水供給及び配水 システム整備計画 |
986 |
ヨルダン | ザイ給水システム改良計画 | 2,379 |
エチオピア | バハルダール市上水道整備計画(供与限度額変更) | 236 |
ガンビア | 第四次地方飲料水供給計画 | 1,591 |
スーダン |
コスティ市浄水場施設改善計画(供与限度額変更) | 241 |
上水道施設運営維持管理改善計画 | 1,004 | |
ベナン | クフォ県及びプラトー県における飲料水供給システム 強化計画(詳細設計) |
129 |
南スーダン | ジュバ市水供給改善計画(供与限度額変更) | 636 |
モザンビーク | ニアッサ州における地方給水施設建設計画 | 2,076 |
マーシャル | マジュロ環礁における貯水池整備計画 | 1,757 |
シリア | 東グータにおける水、衛生及び母子保健サービスへの アクセス強化計画 |
489 |
アフガニスタン | 学校における水・衛生環境改善計画 | 422 |
合計 | 16,951 |
※JICA調べ
開発途上国が発展していくために必要な開発資金を貸し出しています。円借款と呼ばれることが多く、主に、発展に欠かせないインフラ整備に活用されています。開発途上国は返済義務を負いますが、金利は低く抑えられており、返済期間も長く設定されています。
年度 (平成/令和) |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 01 | 02 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
件数 | 0 | 6 | 5 | 3 | 1 | 3 | 3 | 4 | 2 | 1 | 2 |
金額(百万円) | 0 | 83,218 | 88,291 | 42,442 | 23,683 | 70,181 | 75,600 | 143,486 | 21,878 | 38,642 | 54,946 |
※JICA調べ
国名 | 案件名 | 金額(百万円) |
---|---|---|
インド | ラジャスタン州地方給水・フッ素症対策事業(フェーズ2) | 45,816 |
パラグアイ | シウダ・デル・エステ都市圏水及び衛生事業 | 9,130 |
合計 | 54,946 |
※JICA調べ
※WHO飲料水水質ガイドライン
各国が飲料水の安全基準を策定する際の基礎資料としてWHOが勧告した飲料水の目標水質のこと。 ガイドラインにおいては、発癌物質などの汚染物質ごとに個別の基準があり、体重60Kgの成人が1日に2リットルを一生涯(70年間)飲用しても影響がでない濃度に設定されている。
※O&Mネットワーク
Operation and Maintenance network(水道施設運用・管理ネットワーク) IWA傘下でWHOの協力を得て、主に開発途上国の施設維持管理の改善(研修ツール作成、セミナー開催等)に向け活動。実施主体は、国立保健医療科学院水道工学部。
※RegNet
水道に関する制度的枠組みに関する途上国の支援を目的としてWHOが設置
水道に関する規格策定及び国内対策への支援(2011年の規格改定に向け、ワーキンググループに委員を派遣)
※ISO/TC224:
上下水道サービスに関する国際規格(国際標準化機構の第224番目の専門委員会 TC:Technical Committee 専門委員会)
平成20年5月に発生した同地震の際、水道関係団体を通じて、全国の水道事業体や水道関連企業に応急給水用資機材、飲料水等の拠出を呼びかけ復旧支援に協力。
平成23年10月に発生した同洪水の際、上水道施設の洪水時の運転・維持管理についての支援のために専門家チームを派遣。
水道分野の国際協力に関する検討報告書(平成26年度水道国際協力検討委員会報告書)[PDF形式:980KB]
水道分野の研修に関する報告書(平成21年度水道国際協力検討委員会報告書)[PDF形式:2,086KB]
開発途上国における案件発掘・形成能力の向上に資するために、官民協力による専門的・技術的立場から調査検討を行い、熟度の高い優良案件となるよう当該国に対する助言指導を実施しています。なお、事業実施に当たっては、民間企業が各々把握している開発途上国の水道 分野の個別具体的な課題(施設整備や経営・維持管理)や潜在ニーズに係る情報、日本が有する知見及び技術を積極的に活用しています。
カンボジア王国農村地域等の小規模分散型給水システムの計画支援を目的としたプロジェクト[PDF形式:894KB]
中華人民共和国浙江省長興県における水道プロジェクト計画作成指導事業[PDF形式:374KB]
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