アジアハイウェイ路線とその現状
中国は1988年からアジアハイウェイ・プロジェクトに参画し、1993年に初めてアジアハイウェイ・ネットワークが中国国内に設定された。これらの路線は中国側からの提案によりアジアハイウェイ候補路線としてESCAPで検討され、1993年に開催された専門家会議で基本的に合意された。しかし、その後、ESCAPがアジアハイウェイ路線の最終承認を中国側に求めた段階で、中国側からはAH3号の北京~長沙間及びAH82号の長沙~深框間については承認するが、その他の区間については検討中であるとの返答がESCAPになされた。その結果、ESCAPでは、中国側が正式に承認した2区間以外は候補路線(Possible
Route)として扱い、アジアハイウェイ・ネットワーク図でも薄い色で表示して区別していた。
その後、北部回廊プロジェクトにおいても、中国側からネットワークについては検討中という通知が中国側から数度に亘りESCAPに通知され、北部回廊プロジェクト自体の進捗が危ぶまれた。しかし、2001年になり、中国側からアジアハイウェイ路線についての検討が終了したとの文書が提出され、それに基づいて北部回廊プロジェクトの専門家会議が2001年10月に開催された。
専門家会議においては、ESCAPの提示したアジアハイウェイ路線案に加えて、中国側から新たな路線についての提案も行われた。さらに、2002年5月の専門家会議でも中国側から新たな路線についての提案された。但し、専門家会議でも、中国側出席者は、アジアハイウェイ路線そのものの承認については、中央政府が最終的に決定するものであり、決定結果は文書でESCAPに通知するとの原則を会議で発表した。
そして、2002年11月にESCAPで開催されたアグリーメントに向けたワーキンググループ会議ならびに運輸関係委員会において、中国側代表は、中国国内のアジアハイウェイ路線に関して、主として北京~深框間及びモンゴル国境~北京~塘沽間、ならびに隣接国との結節区間に関しては確定路線、その他の路線については近い将来アジアハイウェイとして認定する候補路線(Potential
Route)とすることが中央政府の決定であるという発表がなされた。但し、中国側の発言の中で、中国国内のアジアハイウェイ路線の総延長に関しては、確定路線及び候補路線を合計した距離を発表しており、実質的にはすべてのアジアハイウェイ路線を中央政府が承認したものと理解できる。
なお、アジアハイウェイ・ネットワークの見直し作業では、ESCAP側は、中国国内のアジアハイウェイ路線に関して、路線番号の大幅な見直しを行っている。
下表に新規のアジアハイウェイ路線の概要を示す。
表-1 中国のアジアハイウェイ路線
路線番号
|
起 終 点
|
延長(km)
|
選定基準
|
AH1
|
丹東(Dandong, 北朝鮮国境)→瀋陽(Shenyang)→北京→鄭州(Zhengzhou)→武漢→長沙→広州→深框→香港→南寧(Nanning)→友渲关(Youyiguan、ヴィエトナム国境)
|
4,771
|
*首都間連絡
*工業中心地/農業集積地連絡
*主要港湾連絡
*コンテナターミナル連絡
|
AH3
|
二連浩特 (Erlianhaote, モンゴル国境)→集寧
(Jining)→北京→天津→塘沽 (Tanggu)
|
989
|
*首都間連絡
*工業中心地/農業集積地連絡
|
上海→杭州→南昌(Nanchang) →長沙→貴陽→昆明→景洪
(Jinghong) →尚勇(Mohan、ラオス国境)
|
3,653
|
*主要港湾連絡
*コンテナターミナル連絡
|
景洪→打洛(Daluo、ミャンマー国境)
|
325
|
AH4
|
鳥魯木斉(ウルムチ)→喀什 (Kashi)→紅其柆甫
(Hongqilapu、パキスタン国境)
|
1,711
|
*工業中心地/農業集積地連絡
|
AH5
|
上海→南京→信阳→西安→蘭州→鳥魯木斉→奎屯(Kuitun)→霍尓果斯(Korgos、カザフスタン国境)
|
4,866
|
*工業中心地/農業集積地連絡
*主要港湾連絡
*コンテナターミナル連絡
|
AH6
|
綏芬河(Suifenhe、ロシア国境)→ハルビン→満州里(Manzhouli,
ロシア国境)
|
1,644
|
*工業中心地/農業集積地連絡
*コンテナターミナル連絡
|
AH14
|
河口(Hekou, ヴィエトナム国境)→昆明→端繭(Ruili、ミャンマー国境)
|
1,435
|
*工業中心地/農業集積地連絡
*主要港湾連絡
|
AH31
|
黒河(Heihe, ロシア国境)→ハルビン→長春→瀋陽→大連
|
1,518
|
*工業中心地/農業集積地連絡
*主要港湾連絡
*コンテナターミナル連絡
|
AH32
|
圏河(Quanhe、北朝鮮国境)→長春→白城(Baicheng)
→阿尓山(Arxan、モンゴル国境)
|
1,361
|
*工業中心地/農業集積地連絡
*コンテナターミナル連絡
|
AH33
|
同江(Tongjiang、ロシア国境)→ハルビン
|
658
|
*工業中心地/農業集積地連絡
*主要港湾連絡
|
AH34
|
達云港(Lianyungang)→鄭州→西安
|
1,194
|
*工業中心地/農業集積地連絡
*主要港湾連絡
*コンテナターミナル連絡
|
AH42
|
蘭州→格尓木(Golmudo)→拉薩→樟木(Zhangmu、ネパール国境)
|
2,888
|
*工業中心地/農業集積地連絡
|
AH61
|
喀什→吐尓尕特(Turugat、キルギス国境)
|
156
|
*工業中心地/農業集積地連絡
|
AH65
|
喀什→薩喀勅恰堤(Yi’erkeshitan、キルギス国境)
|
175
|
*工業中心地/農業集積地連絡
|
AH67
|
奎屯→巴克图(Baketu、カザフスタン国境)
|
408
|
*工業中心地/農業集積地連絡
*コンテナターミナル連絡
|
AH68
|
AH5交差点→阿拉山(Alashan、カザフスタン国境)
|
94
|
*工業中心地/農業集積地連絡
|
|
合計
(15 路線)
|
27,846
|
|
データ出典:Asian Highway Database 2005
中国のアジアハイウェイ路線の現状はデータとしては未だにESCAPに提出されていないが、専門家会合参加者からのヒアリングの結果、表に示す通りであると予想される。この中で、状態不明の区間の多くは未舗装道路であると考えられる。
表-2 中国のアジアハイウェイ路線の現状
|
総延長
|
舗装道路
|
未舗装道路
|
未開通
|
状態不明
|
路線番号
|
(km)
|
2車線
|
1車線
|
砂利道
|
土道
|
区間
|
|
|
|
以上
|
|
|
通年可
|
四駆可
|
|
|
AH1
|
4,771
|
4,771
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
AH3
|
4,967
|
4,642
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
325
|
AH4
|
1,711
|
1,711
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
AH5
|
4,866
|
4,866
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
AH6
|
1,644
|
1,644
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
AH14
|
1,435
|
1,435
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
AH31
|
1,518
|
1,518
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
AH32
|
1,361
|
1,121
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
240
|
AH33
|
658
|
658
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
AH34
|
1,194
|
1,194
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
AH42
|
2,888
|
730
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
2,158
|
AH61
|
156
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
156
|
AH65
|
175
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
175
|
AH67
|
408
|
408
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
AH68
|
94
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
94
|
合 計
|
27,846
|
24,698
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
3,148
|
比 率
|
100%
|
88.7%
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
11.3%
|
データ出典:Asian Highway Database 2005
日本の援助動向、日本との関係
日本政府は、改革・開放を推進する中国を積極的に支援してきており、1993年以来、援助額の総額がそれまでトップのインドネシアを抜いて、一位になっている。但し、無償資金協力に関しては、中国の核実験に対する抗議のため、1995年度に原則停止されたが、1997年3月に再開された。表-3及び図-1に中国に対する日本の援助の推移を示す。
表-3 中国に対する日本の援助の推移 (支出純額、単位:百万ドル)
暦年
|
贈 与
|
政府貸付
|
合 計
|
|
無償資金協力
|
技術協力
|
計
|
支出総額
|
支出純額
|
|
1990
|
37.82
|
163.49
|
201.31
|
538.47
|
521.71
|
723.02
|
1991
|
56.61
|
137.48
|
194.09
|
423.67
|
391.21
|
585.29
|
1992
|
72.05
|
187.48
|
259.53
|
871.27
|
791.23
|
1,050.76
|
1993
|
54.43
|
245.06
|
299.49
|
1,189.06
|
1,051.19
|
1,350.67
|
1994
|
99.42
|
246.91
|
346.34
|
1,298.06
|
1,133.08
|
1,479.41
|
1995
|
83.12
|
304.75
|
387.87
|
1,216.08
|
992.28
|
1,380.15
|
1996
|
24.99
|
303.73
|
328.72
|
774.08
|
533.01
|
861.73
|
1997
|
15.42
|
251.77
|
267.19
|
556.75
|
309.66
|
576.86
|
1998
|
38.22
|
301.62
|
339.83
|
1,083.60
|
818.33
|
1,158.16
|
1999
|
65.68
|
348.79
|
414.47
|
1,181.54
|
811.50
|
1,225.97
|
2000
|
53.05
|
318.96
|
372.01
|
791.68
|
397.18
|
769.19
|
図-1 中国に対する日本の援助の推移
また、中国の道路整備に対する日本の過去の協力実績をまとめて表に示すが、1996年以降、従前の鉄道建設に対する有償資金協力に代わり、高速道路建設事業への有償資金協力が急増している点が特徴的である。
表-4 中国の道路整備に対する日本の協力実績
アジアハイウェイ
|
案件名
|
援助の種類
|
年次
|
金額
(百万円)
|
○
|
上海~南京間高速道路建設計画
|
開発調査
|
1986-88
|
-
|
|
上海市黄浦江架橋計画
|
開発調査
|
1986-88
|
-
|
|
海南島総合開発計画
|
開発調査
|
1985-88
|
-
|
○
|
淅江省幹線道路網建設計画
|
開発調査
|
1991-93
|
-
|
|
廈門市西通道建設計画
|
開発調査
|
1992-94
|
-
|
○
|
大連市都市総合交通計画
|
開発調査
|
1994-95
|
-
|
○
|
吉林省地域総合開発計画
|
開発調査
|
1996-97
|
-
|
○
|
長沙市道路整備計画
|
開発調査
|
1998-99
|
-
|
|
四川省成都市公共交通システム整備計画
|
開発調査
|
1999-2001
|
-
|
|
海南島開発計画(道路)
|
有償資金協力
|
1991
|
6,775
|
|
合肥・銅陵道路大橋建設事業
|
有償資金協力
|
1991
|
4,709
|
|
重慶長江第二大橋建設事業
|
有償資金協力
|
1991
|
4,764
|
|
合肥・銅陵道路大橋建設事業(II)
|
有償資金協力
|
1992
|
3,894
|
○
|
貴陽~新寨道路建設事業計画
|
有償資金協力
|
1996
|
14,968
|
○
|
杭州~衢州高速道路建設事業計画
|
有償資金協力
|
1998
|
30,000
|
|
万県~梁平高速道路建設事業計画
|
有償資金協力
|
1998
|
20,000
|
|
海南東線高速道路拡張事業計画
|
有償資金協力
|
1999
|
5,274
|
|
梁平~長寿高速道路建設事業計画
|
有償資金協力
|
1999
|
24,000
|
○
|
河南新郷~鄭州高速道路建設計画
|
有償資金協力
|
1999
|
23,491
|
○
|
黒龍江省黒河~北安道路建設事業計画
|
有償資金協力
|
2000
|
12,608
|
○
|
湖南省道路建設事業
|
有償資金協力
|
2002
|
23,000
|
|